2018年12月01日号
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artscapeレビュー

THE ROYAL EXPRESS、《下田プリンスホテル》、《ベイ・ステージ下田》

2018年08月01日号

[静岡県]

お昼に横浜駅を出発する伊豆観光列車「THE ROYAL EXPRESS」に乗車した。水戸岡鋭治がデザインを担当し、浅いアーチの格天井は皇室用客車をイメージしたものだろう。最後尾の読書室、コンサートのための車両、厨房だけがある車両、子供の遊び場がある車両など、各種の空間をリニアに繋ぐのは、列車ならではの構成だ。もっとも、エクスプレスという名前をつけているが、実際は速く到着することはあまり重要ではなく、むしろ3時間かけて下田に向かい、昼食、眺望、演奏を楽しむのがクルーズ・トレインの醍醐味だ。

リノベーションの関係で、下田は十数年前に何度か通っていたが、保存運動していた「南豆製氷所」が解体されてからは初めての訪問である。製氷所跡は今風の飲食施設《ナンズ・ヴィレッジ》に変化していた。しかし、なまこ壁以外の地域アイデンティティとなりうる建築だから、やはり残せばよかったと思う。山中新太郎が手がけた蔵ギャラリーを備えた旧澤村邸の改修(観光交流施設)、ペリーロードなどを散策してから、《下田プリンスホテル》に泊まる。45年前の建築なので、客室のインテリアは現代風に改装されているが、エレベータのコアや海を望むレストランほか、円筒のヴォリュームをあちこちに散りばめ、曲線好きの黒川紀章らしさを十分堪能できる。全体としては、海に向かってV字に開き、雁行配置された全客室がすべてオーシャンビューの明快な構成をもつ。

翌朝はシーラカンスK&Hによる《ベイ・ステージ下田》を見学した。物産館、飲食施設、駐車場、史料編纂室、会議場、最上階の博物館などが複合した道の駅である。道路側からは浮遊するガラスのボリュームが船のように見え、反対側のファサードは縦のルーバーが目立ち、オープン・デッキから海を望む。なお、博物館の展示デザインは、空間の形式性が明快で興味深いが、情報量がやや少ないような印象を受けた。

THE ROYAL EXPRESS 読書室


《ナンズ・ヴィレッジ》


旧澤村邸の改修(観光交流施設)


《下田プリンスホテル》円筒のヴォリューム


《下田プリンスホテル》雁行配置された客室


《ベイ・ステージ下田》道路側から見るガラスのボリューム


《ベイ・ステージ下田》オープン・デッキ


2018/07/14(土)(五十嵐太郎)

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