artscapeレビュー

開館30周年記念企画 現代陶芸 笹山忠保 展─反骨と才気の成せる造形─

2014年06月01日号

会期:2014/04/26~2014/06/29

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

信楽を拠点に活動するベテラン陶芸家・笹山忠保が、地元滋賀の美術館で大規模な回顧展を開催している。本展では半世紀以上にわたる彼の活動を、前半と後半の2部に分けて構成。前半(1950年代~1990年代前半)はいわば前衛時代であり、直線的な構造を持つオブジェなど、やきものらしさを拒否したかのような作品が並んでいた。後半(1991年代以降)は、幾何学的な造形はそのままに信楽焼の風合いを持たせた作品が主体で、終盤に向かうにつれ単体のオブジェから空間性を意識した組作品へと変化していく。一作家の業績が非常にわかりやすく紹介されており、回顧展はかくあるべしという充実した内容であった。前半は作品を詰め込み過ぎて狭苦しさを覚えたが、同時に学芸員と作家の情熱を感じたことも付記しておく。

2014/04/26(土)(小吹隆文)

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