artscapeレビュー
アニー・リーボヴィッツ WOMEN: New Portraits
2016年03月01日号
会期:2016/02/20~2016/03/13
TOLOT/heuristic SHINONOME[東京都]
写真家アニー・リーボヴィッツが手がける女性を被写体としたプロジェクトの展覧会。1999年にスーザン・ソンタグと共同制作した写真集『Women』以来続いているシリーズで、アーティスト、ミュージシャン、経営者、政治家、作家、慈善活動家など、さまざまな領域で活躍している女性たちが被写体となっている。印刷製本工場2階の倉庫を改装したギャラリーを会場に、片面には今回の新作と過去の仕事(ジョン・レノンとオノ・ヨーコが抱擁する有名な写真も)のプリントやプロフィールを記したパネルを配し、ほかの3面には巨大な液晶ディスプレイ(大画面の液晶モニタを4枚合わせたもの2台と、6枚合わせたもの1台)を置いて作品のスライドショーを見せるほか、過去に刊行された作品集を手に取ることができるコーナーが設えてある。TASCHENから2014年に出た巨大な作品集に収められた写真は壁面に展示されているプリントよりも大きく、マーク・ニューソンがデザインした専用の三脚台に展示されている(写真集を買うとこの台が付いてくる!)。
Rolling Stone誌のフォトグラファーとしてキャリアをスタートし、Vanity Fairなどのファッション誌を舞台に著名人たちのポートレートを撮影してきたリーボヴィッツがこのシリーズで表現したいことはなんだろうか。内覧会の質疑応答で女性記者のひとりが女性を撮ることの意味や、過去に撮影した女性たちとの変化などについて尋ねていた。質問者は政治的、社会的、あるいはジェンダーについてなにか引き出したかったようなのだが、リーボヴィッツは少し話をずらした回答をしているように私には聞こえた。新作のポートレートにはアウン・サン・スー・チー、マララ・ユスフザイ、ケイトリン・ジェンナー(1976年モントリオールオリンピックの男性金メダリストで、2015年に性同一性障害を公表した)等々の肖像があるのでそのような質問が出ることも理解できるが、他方で彼女が権力者たちの肖像も多数撮っていることを考えれば、そこに記録されているのは、時代を問わず、またイデオロギーとは別の次元において、女性たちの強さと美しさ──肉体以上にその精神における──なのだと思う。[新川徳彦]
2016/02/17(水)(SYNK)