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三軒茶屋 三角地帯 考現学

2016年03月01日号

会期:2016/01/30~2016/02/28

世田谷文化生活情報センター:生活工房[東京都]

東京都世田谷区三軒茶屋。生活工房のあるキャロットタワーとは世田谷通りを挟んだ向かい側、玉川通り(国道246号線)との間に挟まれた「三角地帯」に、古い商店街・飲食店街が軒を連ねている。本展は戦後に立った闇市の名残を留めるこの魅力的な一帯を、今和次郎の考現学よろしく観察し記録し、手書きの表や図版、イラストでレポートするという企画。看板や暖簾などのデザインの採集や、通行人調査といった外から観察できるもののほか、飲食店で出されるビールの銘柄やお通しの種類の記録、特定のバーに訪れた人たちの属性や、飲まれたウィスキーの銘柄、スナックのカラオケで歌われた曲など、奇妙で興味深いレポートが並ぶ。これまでにも「三角地帯」を何度か歩いているが、展示を見た後に改めて訪れてみると、これまで見えていなかった/見ていなかったものがたくさんあることに気づかされた。この調査に参加していれば、おそらくもっと多くのものが見えてきたに違いない。展示レポートでやや気になったのは、一部に観察対象へのインタビューと思しき内容が含まれていたり、観察結果からなにか理由を推論する言葉が見られたりする点である。編集者・都築響一氏は自身の仕事と比較して、今和次郎の考現学は対象のなかに入っていかない、つねに対象から距離を置いていると評している(『今和次郎採集講義』[青幻舎、2011]158~159頁)。また、限られた期間や時間、場所において行なわれる考現学的観察は統計調査とは言い難く、観察結果を以て直ちになにかを結論づけられるような性格のものではない。その方法の限界と美学からすれば、ここでのレポートはあえて視覚的な観察と記録の提供に徹して、そこからなにを考えるかについてはすべて鑑賞者に委ねたほうが良かったと思う。[新川徳彦]

2016/02/20(土)(SYNK)

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