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超絶技巧──世界を驚かせた焼物「吉兆庵美術館蒐集 真葛香山展」

2016年03月01日号

会期:2016/02/17~2016/02/28

日本橋三越本店新館7階[東京都]

サントリー美術館で始まった宮川香山(真葛香山)展は初代の作品に焦点を絞ったものだが、こちらは初代から三代までの仕事を紹介する展覧会。「超絶技巧」というキャッチコピーとともにチラシにあしらわれた蟹はややミスリーディングで、その言葉と画像から期待される初期の高浮彫はない。出品されている初代の作は釉下彩磁器が中心で、他に大観が絵付けした茶碗など。チラシにある高浮彫の蟹は初期の作品ではなく、東博が所蔵する《褐釉高浮彫蟹花瓶》(明治14年/1881年)を初代香山自身が大正4年(1915年)に再制作したものの1体で、同様のものがサントリー美術館の田邊コレクションにも出ている。香山の仕事の特徴は初代の初期においてはその奇想的な造形にあり、その後は美しい釉下彩磁器を実現した釉薬と焼成の技術にあり、これらを「超絶技巧」と称するのは安易に過ぎよう。また解説パネルは概ね初代の業績について触れているにもかかわらず、その下の展示品が二代三代が混在していることや、個々の作品の制作年代が示されていないことは残念だ。とはいえ、吉兆庵コレクションの作品自体は良いものである。二代三代の花瓶に花を生ける展示は美術館博物館では考えられない大胆さ。「真葛窯展」というタイトルにして、初代から昭和20年5月29日の横浜空襲で三代宮川香山と職人たちが亡くなり真葛窯が途絶えるまでの歴史を追った構成ならばずっと良い展示であっただろうと思う。[新川徳彦]

2016/02/25(木)(SYNK)

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