artscapeレビュー
おいしい東北パッケージデザイン展 2015 in Tokyo
2016年04月01日号
会期:2016/03/09~2016/04/11
東京ミッドタウン・デザインハブ[東京都]
東北地方の10社10商品に対する新しいパッケージデザイン案を全国のデザイナーから募集し、商品化を目指すプロジェクト。東北経済産業局と日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)による企画の第2回で、応募702点から受賞作・入選作227作品が展示されている。プロのデザイナーとデザイン学生は区別なく審査され、今回は優秀賞10作品のなかに学生3名の提案が選ばれている。商品は麺類や練り物、漬け物などの加工食品と、地元産のラベンダーを使用した芳香剤。各々の企業に対象商品を取材した「ヒアリングシート」に書かれた企業理念やモノづくりの考え方、商品特性、価格、デザイン要件を元にデザインを行なう。地産地消商品やお土産品と位置づけられる商品には販売場所・地域が限定されているものが多いが、これを機に販路の拡大を視野に入れている商品もある。実用性・機能性が求められる商品もあれば、他社製品との差別化が求められる商品もある。それらの要望・要件をどのようにデザインに落とし込むかが問われている。昨年との違いは、優秀賞だけではなく、ノミネート作品から商品化される可能性が示されている点だろうか。
3月11日に開催されたオープニングトークには、昨年度の優勝受賞者3名らが登壇し、受賞作商品化の状況が報告された。それによれば、参加10社10商品のうち2社が辞退、8商品が商品化あるいは商品化に向けて話が進められているとのことだ。発売された商品については良く売れている、バイヤーの反応がよいなどの結果が出ており、現在進行中のものは単品ではなく他商品も含めたシリーズ展開をしたいという要望が出てプロジェクトが進められているという。デザインが良くなったからといって売れるとは限らないし、売上増大の理由がすべてデザインにあるわけではないだろうが、パッケージデザインを変更する作業に関わることでメーカーの側に意識の変化が生じているように見受けられる。すなわち、モノをつくって卸に納めて終わりになるのではなく、商品の力に自信を持ち、それを消費者にどのように届けるのか/売るのかという点に意識的になっていると感じる。これまでデザイン、デザイナーとの関わりが薄かった企業にそのような変化が生じているとすれば、メーカーとデザイナーの双方にとってこのプロジェクトはおおいに意義のある結果を出していることになる。なお、本プロジェクトと同様の試みが北海道でも始まっているそうだ(北海道経済産業局主催:北海道のおいしいつながり|パッケージデザイン展2015)。[新川徳彦]
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2016/03/11(金)(SYNK)