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時間をめぐる、めぐる時間の展覧会

2016年04月01日号

会期:2016/03/05~2016/03/21

世田谷文化生活情報センター:生活工房[東京都]

私たちを取りまく世界にはいくつかの「時間」がある。世界一正確に運行する日本の鉄道。ジャスト・イン・タイムに見られるような時間と資材の管理。タイムカードによって賃金に換算される労働は、どの1分1秒も均質なビジネスの時間だ。他方で、家庭での生活、折々の行事、移ろう季節の楽しみ、食卓に上る食材の変化など、そのときどきで価値や単位が異なる暮らしの時間がある。時間に追われ、時間に支配される生活は近代的な現象で、それ以前から長きにわたって親しんできた時間の流れは、いまでも私たちの生活のさまざまな場面に残されている。この展覧会を見て体感したことは、なかば忘れかけていた多様な時間、均質ではない日々の存在だ。
 4階展示室第1部は「律動の星に生きる」。地球と太陽、月など天体の関係性から生まれる周期と律動について示されている。地球の自転によって決まる1日、月の満ち欠けによって生じる1カ月、地球の公転による1年という時間と季節の流れ、そして太陽と月の位置関係による重力の変化が、人間を含む地球上の生物のリズムを司っているさまを見せる。第2部「人間たちの時」は、人々が「時」を畏れ、克服してきた歴史だ。見どころは《時の精霊》と題した絵。ラウル・デュフィ「電気の精」に倣って、ここには古代から産業革命を経て現在まで、人間と時間との関わりの歴史が描かれている。第3部は「わたしたちの時」。トルコのラマダンや、ティティカカ湖の生活、カトマンドゥのバザールなど、さまざまな地域の暮らしと時間の関係を、国立民族学博物館が制作した映像で見る。そして最後のパートは、《時の大河》と名付けられた大きな円環で、地球上における1年の変化と人々のくらしを立体的なダイアグラムで示すたいへんな労作。世田谷で南天が実を付けるころに鹿児島ではナベヅルが飛来するなど、円の内側には私たちに身近な地域(世田谷)の、外側になるほど遠くの地域の出来事が書かれている。天井から吊り下げられた棒には、円環と呼応してその季節における人々のくらし・行事が示され、周囲を囲むバナーにはさらに詳細な季節の営みが書かれている。3階ギャラリーは「時の採集箱」。樹木の年輪、川を流れるあいだに丸くなった石ころ、貝殻に刻まれた成長の跡、地中に埋もれた植物の化石である石炭等々、時間の流れが刻み込まれたモノと写真が展示されている。企画、会場デザインは2012年に同所で「I'm so sleepy──どうにも眠くなる展覧会」を手がけた生活工房の竹田由美さん、セセンシトカの佐々木光さん、佐々木真由子さん。展示と映像を見終わって、人とくらしと時間にまつわる1冊のエッセイ集を読み終えたような印象が残った。[新川徳彦]


《律動の星に生きる》


《時の精霊》


《時の大河》(すべて会場風景)

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2016/03/17(木)(SYNK)

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