artscapeレビュー

降り落ちるものを 今村遼佑

2016年04月01日号

会期:2016/03/08~2016/03/20

アートスペース虹[京都府]

大通りに面してガラス張りの扉から展示室が見えるギャラリー。そこには、青いプラスチックのバケツと沈丁花の植木、白いカーテンとiPhone、そして7点の絵画作品が展示されていた。青いバケツとiPhoneの作品は日常の些細な情景を記録した映像と作品自体が相似形あるいはリフレインを奏でており、絵画は雪が雨に変わる情景とハクモクレンを描いたものだ。そして沈丁花の濃厚な香りが室内に立ち込め、空間全体を統合してゆく。筆者は過去にも嗅覚を利用した作品を何度も体験しているが、今回ほど香りの存在感が際立ち、効果的に使用された例を知らない。今後、五感を駆使する作品に出会ったら、きっと本展の経験が評価基準になるだろう。

2016/03/08(火)(小吹隆文)

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