artscapeレビュー
山元彩香「We are Made of Grass, Soil, and Trees」
2018年10月01日号
会期:2018/08/25~2018/09/29
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム[東京都]
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムでの山元彩香の個展は4年ぶりだという。その展示を見て、彼女の写真のたたずまいが微妙に変わってきているように感じた。
異国の地で出会った少女たちをモデルにしたポートレートという、基本的な写真のあり方は同じである。だが今回、ラトビア、ロシア、ウクライナ、ブルガリア、ルーマニアなどで行なわれた撮影では、被写体を突き放すのではなく、より細やかにコミュニケーションをとっているように感じる。以前は、互いに言葉がわからないので意思疎通が図れないという状況を逆手にとって、あえて自分とモデルたちとの意識のズレを可視化するような作品が多かったのだが、今回の撮影は「対面する相手の名前の意味や見た夢など、その人の本質に迫るヒントを求めて質問を投げかけながら」行なわれたのだという。結果として、以前よりポートレートとしての精度と深みが増してきているのではないだろうか。
また、展示作品のなかには、純粋なポートレートではなく、女性が写っている白黒写真を画面に配した静物写真も1点だけ含まれていた。この試みも、今後の彼女の写真の新たな方向性を示唆している。ポートレートと静物、風景などを組み合わせることで、より多層的な世界を取り込むことができるのではないだろうか。今回の展示をひとつの区切りとして、さらなるな可能性を模索していってほしい。なお、写真展の開催に合わせて、T&M Projectsから同名の写真集が刊行されている。
2018/09/12(飯沢耕太郎)