artscapeレビュー

飯沼英樹 東京楽園

2018年10月01日号

会期:2018/09/07~2018/09/29

SNOW Contemporary[東京都]

ファッショナブルな女性を彫った木彫が30点以上ある。小は10センチ程度から大は1メートル近いものまで、全身像もあれば胸像もあり、ポーズもひっくり返ったりヨガ風だったりさまざまで、ハデな彩色も施されている。いちばんの特徴は台座がついていて、しかも1本の木から彫り出しているらしく、本体と台座が一体化していること。だれが見ても「彫刻」だが、でも本当にこれは「彫刻」か? と疑ってみたくなるのは、これが床に置いてあるのではなく、壁に掛けてあるからだ。絵画と彫刻を見分ける方法のひとつが「壁掛け」か「床置き」かだとすれば、これは表現形式としては彫刻であるが、展示形式としては絵画(レリーフ)といえないこともない。1つひとつの作品をすっぽり囲むように壁に正方形の色面を施しているのは、絵画性を強調するため額縁の役割を与えているからだ。もっとも壁に固定しているのは台座の部分だけで、彫像は壁と完全に切り離されているので、やはり彫刻というべきか。

飯沼は、絵画と彫刻の違いや額縁と台座の役割にかなり敏感なようだ。今回の出品作品にはもうひとつのタイプがあって、分厚い板に女性像を浮き彫りにして、周囲を板のまま残したもの。彫った部分が彫り残した周囲より沈んでいるため「沈み彫り」ともいうが、この彫り残しがちょうど額縁の役割を果たしているのだ。女性像のポーズやファッションや色彩につい目を奪われてしまいがちだが、こうした形式面にこそ作品の本質が宿っている。

2018/09/19(村田真)

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