artscapeレビュー
木藤富士夫 写真展「公園遊具 playground equipment」
2019年09月01日号
会期:2019/08/07~2019/08/20
銀座ニコンサロン[東京都]
木藤富士夫は1976年、神奈川県生まれ。2005年に日本写真芸術専門学校を卒業後、フリーランスの写真家として活動し始めた。2006年からずっと撮影しているのが、各地の公園に設置されているコンクリート製の遊具である。タコや象の形の滑り台をよく見かけるが、木藤が今回発表した47点の作品を見ると、実に多様な種類があることに驚かされる。電話機、ロボット、魚の骨、巻貝、さらに鬼やガリバーまで、ありとあらゆる造形のオンパレードだ。むろん、子どもの興味を惹きつけるためのデザインなのだが、むしろ作り手の無意識の願望が形をとったような不気味さがある。
木藤の興味も、その百花繚乱のイマジネーションの乱舞に向けられているのではないだろうか。それを強調するために、彼は撮影の仕方にも工夫を凝らしている。撮影は夜におこなわれ、遊具を浮かび上がらせるために数100発から数1000発のストロボを発光させて、その輪郭や細部の質感をくっきりと浮かび上がらせる。最終的にそれらの画像を合成して、一枚のプリントとして完成させていく。結果的に、現実感と非現実感との両方を醸し出す、不思議な手触り感を備えた作品が成立してきた。デジタル化によって、これまでは撮影がむずかしかった状況をリアルに捉えることができるようになったが、本作もその成果のひとつといえそうだ。作品数はすでに200点近くになっているという。木藤はこれまで、8冊の小写真集を自費出版してきたが、そろそろ一冊にまとめる時期がきているのではないだろうか。
2019/08/07(水)(飯沢耕太郎)