artscapeレビュー

TOKAS-Emerging 2019 PART. 1

2019年09月01日号

会期:2019/07/20~2019/08/18

トーキョーアーツアンドスペース本郷[東京都]

谷崎桃子、砂田百合香、小田原のどかの3人展。目玉の大きな少女をペインタリーに描いた谷崎も、鉄の輪を使った動く彫刻を出している砂田も悪くないが、「近代を彫刻/超克する」と題した小田原の展示がおもしろい。といっても、作品展示というより研究発表の体なのだが。

彫刻を学んでいた小田原は、なぜ街なかに多くの女性のヌード像が平然と立っているのか、それがなぜ「平和」などと題されているのか不思議に思い、その起源を探っていくうちに、三宅坂にある3体の女性ヌード像《平和の群像》(1951)に行きつく。その台座はヌード像に不釣り合いなほど立派で、調べてみると、もともと《寺内元帥騎馬像》(1923)という軍人の銅像が載っていたという。しかし戦争中に金属回収で銅像は武器に変わり、戦後ぽっかり開いた台座の上に《平和の群像》が置かれたというわけ。戦争から平和へ、軍人の騎馬像から女性ヌードへと180度転換したわけだが、どちらも作者は男性で、その時々のブームに乗った彫刻設置事業のひとつだったという点では大して変わりがない。というようなことを、写真や資料によって解き明かしていく。戦争画の問題と本質的に同じなのだ。小田原自身の彫刻も、ロッソのような顔の石膏像が3体あったが、こちらのほうの展開も楽しみ。

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