artscapeレビュー

古典×現代2020―時空を超える日本のアート

2019年09月01日号

会期:2020/06/24~2020/08/24

国立新美術館[東京都]

古典美術と現代美術を対置させる手法は、雑誌や画集ではよくあるが、実際に展覧会で見たことは意外に少ない。海外ではたまに見かけるけど、日本ではほとんどない。それは、どっちがイニシアチブをとるかという問題があるからではないか。つまり、古典に軸足を置く企画者なら、例えば東博に現代美術を持ち込むことになるし、現代を軸に考える企画者なら、例えば都現美に古美術を展示しなくてはならない。どちらもリスクが高そうだ。そこで今回、古典も現代もない空っぽの新美術館が名乗りを上げたってわけか。今年はオリパラ関連の「日本博」キャンペーンもやってるし、金もたんまり出そうだみたいな。

古典と現代の組み合わせは、仙厓×菅木志雄、花鳥画×川内倫子、円空×棚田康司、刀剣×鴻池朋子、仏像×田根剛、北斎×しりあがり寿、乾山×皆川明、蕭白×横尾忠則の8組。このうち仙厓×菅、円空×棚田、乾山×皆川、蕭白×横尾あたりはよくも悪くも予想がつくし、実際よくも悪くも予想にたがわぬ展示だった。際立ったのは、刀剣×鴻池と仏像×田根の2組。鴻池は刀剣を陳列ケースに入れ、その上に獣皮を縫い合わせた上に神話的イメージを描いた巨大な《皮緞帳》を掲げ、中央に人形の首を振り子のように飛ばしてる。首が飛ぶのも壮観だし、《皮緞帳》そのものも見事だが、なにより刀剣との対比が鮮烈だ。

田根は鎌倉時代の《日光菩薩立像》と《月光菩薩立像》の2体を並べ、両側に配した照明を上下に動かした。両菩薩像は上から徐々に闇に包まれ、最後は暗闇になる。今度は下から徐々に明るくなり、最後は黄金の全身をあらわにするという仕掛け。つまり、ほかのアーティストと違って本人はなにもつくらず、ただ光を操作するだけ。それでいていちばん刺激的で、もっとも説得力があった。

2020/07/26(日)(村田真)

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