artscapeレビュー

長島有里枝×竹村京 まえ と いま

2019年09月01日号

会期:2019/07/13~2019/09/01

群馬県立近代美術館[群馬県]

長島有里枝の祖父母は群馬県高崎市の出身で、彼女も幼い頃から市内の親戚の家などをよく訪ねていたという。東京出身の長島にとって、高崎は第二の故郷だったということだ。そんな縁もあって、高崎の群馬県立現代美術館で、刺繍を作品に使う当地在住のアーティスト、竹村京との二人展が実現した。

長島は、祖母が撮影した庭の花の写真をモチーフに、滞在していたスイスで撮影した「SWISS」、祖母が買い揃えた衣服が、姪に「おさがり」として受け継がれる状況に目を向けた「Hand Me DOWN」、18歳から現在まで群馬県で撮った写真を集成した「Home Sweet Home」、祖母が遺した押し花用のドライフラワーをフォトグラムの技法で再生した「past,perfect,progressive/ 過去完了進行形」などのシリーズを、細やかな手つきでインスタレーションし、祖父母と高崎の記憶を再構築している。それらは竹村が制作し続けている、日常のモノや写真と刺繍された布とのコンビネーションの試みと、とてもうまく対応しており、二人のアーティストの作品世界が滑らかに接続していた。このところの長島の写真を使うアーティストとしての表現力は格段に上がってきており、どんな枠組にも対応できるようになってきている。今回は日本人のアーティストとの二人展だったが、もし機会があれば海外作家とのコラボレーションも考えられそうだ。

ちょうど夏休み中の企画だったということもあって、アーティストトークや小学生を対象とするワークショップも開催された。さまざまな観客に向けて広く開かれた、風通しのいい展覧会だ。

2019/08/20(火)(飯沢耕太郎)

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