2021年10月15日号
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artscapeレビュー

栗林隆展

2021年04月01日号

会期:2020/11/21~2021/03/21

入善町 下山芸術の森 発電所美術館[富山県]

黒部宇奈月温泉駅前でレンタカーを借りて、娘の運転で発電所美術館へ。なにしろここは発電所を再利用した美術館だけに交通の便が悪く、娘が同行してくれなかったらタクシーで行くしかなかった。20年前は美術館に連れて行くと泣き叫んでいた娘も成長したもんだ。ただし帰りに黒部市で寿司をたらふく食わせたので、タクシーのほうが安かったかも。

さて「栗林隆展」だが、美術館内はスゴイことになっていた。がらんとした展示室に木材を巨大なドーナツ型に組み、中央に球形、その上に円筒形を載せ、周囲を鉄パイプの足場で囲っている。バベルの塔にしては小さすぎるし、宇宙船にしては木製だし。かたちやサイズ、そして《元気炉》というタイトルから原子炉を連想しなければならないが、それにしてはポンコツすぎるなあ。もちろんそれが手づくりの味ですが。かつて発電所の取水口だったらしき大きな穴を脱衣場にし、そこからドーナツ型の通路をくぐり抜けて中央の球形の部屋に入る。内部は六角形のサウナ室になっており、椅子もついている。見上げると万華鏡のような煙突が伸び、天に空が見えるが、これはリアルではなく栗林が福島で撮った写真だという。屋外にある釜で火を焚いて蒸気を配管で送り、実際にサウナとして使っていたそうだが、残念ながらこの時期はコロナの緊急事態により稼働していなかった。

元発電所という立地の下、原発事故から10年目というタイミングで、サウナに入って元気になろうというこの企画、サイコーだぜ。ここでは水力(発電所)、火力(サウナ)、原子力(原発)という3つの文明の力が、アーティストの回路を通して芸術かつ娯楽に変換されている。これこそプロメテウスの火に対抗できるアートの力というものだろう。いっそ美術館をやめてサウナとして営業を続けたらどうだろうか。



展示風景[筆者撮影]

2021/02/25(木)(村田真)

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