2021年09月15日号
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artscapeレビュー

「写真の都」物語 —名古屋写真運動史:1911-1972—

2021年04月01日号

会期:2021/02/6~2021/03/28

名古屋市美術館[愛知県]

「『写真の都』物語」という展覧会のタイトルは、大正~昭和初期に、ゴム印画法による繊細で優美な風景写真で知られた日高長太郎の「そして共に倶に進んで写真の都!!名古屋たらしめたい」という言葉に由来するという。今回の展示を見ると、愛友写真倶楽部の中心メンバーで、名古屋における「芸術写真」の草分けの一人でもあった日高の願いが、その後に多くの写真家たちによって受け継がれ、発展させられていったことがよくわかる。

本展は「写真芸術のはじめ―日高長太郎と〈愛友写真倶楽部〉」「モダン都市の位相―「新興写真」の台頭と実験」「シュルレアリスムかアブストラクトか―「前衛写真」の興隆と分裂」「“客観と主観の交錯”―戦後のリアリズムと主観主義写真の対抗」「東松照明の登場―リアリズムを超えて」「〈中部学生写真連盟〉―集団と個人、写真を巡る青春の模索」の6部構成で、雑誌等の複写や資料展示を含めて、まさに「名古屋の写真運動史」の総ざらいというべき内容だった。これまで名古屋市美術館では、学芸員の竹葉丈の企画で、愛友写真倶楽部、坂田稔、山本悍右らの前衛写真、東松照明などの写真展が開催されてきたが、今回はその集大成と言ってよいだろう。どうしても東京や大阪、神戸などの関西エリアの写真家たちの活動の間に埋もれがちな「名古屋の写真運動」の厚みと質の高さに、あらためて瞠目させられた。

個人的に特に興味深かったのは、最後のパートの「〈中部学生写真連盟〉―集団と個人、写真を巡る青春の模索」である。大学や高校の写真部の学生たちが組織した全日本学生写真連盟は、1965年から写真評論家の福島辰夫の指導の下に、共通のテーマで写真を撮影していく「集団撮影行動」を基軸とした政治性の強い写真表現を模索し始める。それに応える形で、全日本学生写真連盟の支部、中部学生写真連盟に属する大学、および高校の写真サークルの学生たちも、「集団撮影行動」を推し進めていった。今回の展覧会には、名古屋電気高等学校写真部の石原輝雄や杉浦幼治らによる写真集『大須』(1969)、名古屋女子大学写真部のメンバーによる「郡上」(1968~70)などのプリントが展示されていた。全日本学生写真連盟による「集団撮影行動」の成果、『10・21とは何か』(1969)、『ヒロシマ・広島・hírou-ʃímə』(1972)なども含めて、揺れ動く政治状況を背景にしたこの時期の学生たちの「写真を巡る青春の模索」は、注目すべき内容を含んでいる。写真集の復刻や新たな資料の掘り起こしを含めた展覧会を企画するべきではないだろうか。

2021/02/28(日)(飯沢耕太郎)

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