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カタログ&ブックス | 2021年4月1日号[テーマ:夫妻]

2021年04月01日号

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、東京・世田谷美術館で開催中のアアルト夫妻とその建築に関する展覧会「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話」にちなみ「夫妻」。「芸術・アート」ジャンルのなかでこのキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングトップ10をお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「夫妻」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:愛の手紙 作曲家・古関裕而と妻・金子の物語

編集・発行:マガジンハウス
発売日:2020年4月23日
サイズ:29cm、95ページ

明治末期に福島市で誕生した古関裕而は、5000曲以上の曲を世に送り出した、昭和を代表する作曲家だった。
2020年度前期放送のNHK連続テレビ小説『エール』のモデルとなった古関夫妻の足取りを追うことで、ドラマを観ながら、大正から昭和への時代背景も楽しむことができます。巻頭には連続テレビ小説の内容解説と、主役である窪田正孝さんとヒロイン・二階堂ふみさんの最新インタビューを掲載。古関裕而の偉業を支えたのは、文通によって心を通わせ、後に妻となった金子の存在だった。結婚前の恋文と当時ならではの心温まるやりとり、大正時代のエピソード、作曲家見習い時代、戦争を乗り越え、「平和の祭典」である1964年の東京オリンピックのために「オリンピック・マーチ」を作曲するまでのストーリーがページ内に。聴き覚えのあるメロディや、怪獣映画『モスラ』での主題歌、美空ひばりや島倉千代子など日本コロムビアの人気歌手と古関メロディの秘話、『紺碧の空』他スポーツ応援歌のこぼれ話も交えて。夫婦の軌跡を多彩な図版を添えてご紹介。
古関夫妻が子ども時代を過ごした大正時代や、新婚時代を過ごした昭和初期の文化などについてもわかりやすく解説。古関裕而の故郷・福島市のガイドと金子の故郷・豊橋市のガイドも。大正昭和の歴史好きも朝ドラファンも必携の一冊がここに!


2位:猪熊弦一郎のおもちゃ箱 やさしい線

監修:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、ミモカ美術振興財団
発行:小学館
発売日:2018年2月26日
サイズ:22cm、256ページ

日本を代表する洋画家の初の物語作品集。
パリでマティスに師事し、藤田嗣治には「ちゃん」づけで呼ばれる仲だった猪熊さんは、イームズ夫妻やイサム・ノグチなど、多くの人から愛されました。自由な絵を描く、自由な人でした。道端で拾ったゴミも、お菓子の包み紙も、猪熊さんの手にかかれば美しいオブジェになりました。常に二人三脚だった妻の文子さんをモデルに、たくさんの絵を描きました。描く対象はいつでも「自分の愛するもの」で、90歳で亡くなるまでロックを聴きながら、明るく明るく生きました。三越の包装紙を見たことはありますか? あの「華ひらく」は、いのくまさんと「アンパンマン」の作者、やなせたかし氏のコラボレーションによるものです。
本書は、物語とともに時代を追って紹介する数々の楽しい作品や、世界中で集めたビンや小物などのセンスあふれるコレクション、ガラクタを集めてつくった不思議なオブジェたちに大好きだったモチーフの猫や鳥のスケッチブックなど、見ているだけで明るい気持ちになる作品と、心温まる物語が詰まった一冊です。さらに、84年に刊行し、長らく復刊が求められていた『画家のおもちゃ箱』も特別再収録しています!


3位:すぐわかる正倉院の美術 見方と歴史 改訂版

著者:米田雄介
発行:東京美術
発売日:2019年10月12日
サイズ:21cm、135ページ

天平文化の粋を伝える聖武天皇夫妻遺愛の品々を中心に、東大寺の儀式用品や文書、武具など約9000件の宝物を収めた正倉院について、代表的宝物の見どころと特質、その歴史を簡潔にまとめた決定版ガイドの新装増補。



4位:星野道夫と見た風景(とんぼの本)

著者:星野道夫、星野直子
発行:新潮社
発売日:2005年1月
サイズ:21cm、125ページ

クマを憎んではいません──。星野道夫がヒグマの事故で急逝して8年。直子夫人が夫妻で過ごした5年半を初めて追想する。撮影同行時の作品を中心に名カット110余点を掲載。写真家、夫、そして父として生きた星野が今、蘇る。



5位:古伊万里入門 佐賀県立九州陶磁文化館コレクション 珠玉の名陶を訪ねて─初期から爛熟期まで Koimari: An Elegant Porcelain

監修:佐賀県立九州陶磁文化館
発行:青幻舎
発売日:2007年9月
サイズ:15cm、255ページ

伊万里焼の草創期、爛熟期、後期までを年代順に通観し、古伊万里の特徴と様式の変化を紹介する。佐賀県立九州陶磁文化館所蔵品の中から柴田夫妻コレクションを含む300余点を解説とともに掲載し、その魅力を探る。



6位:《原爆の図》のある美術館 丸木位里、丸木俊の世界を伝える(岩波ブックレット)

著者:岡村幸宣
発行:岩波書店
発売日:2017年4月5日
サイズ:21cm、63ページ

原発と原爆を一体のものとして批判していた丸木位里・丸木俊夫妻の共同制作〈原爆の図〉はいかに描かれたのか。2人の生い立ちと遍歴、美術史的にも再評価が進む〈原爆の図〉について、丸木美術館の学芸員が語る。



7位:モーツァルト演奏法と解釈 新版

著者:エファ・バドゥーラ=スコダ、パウル・バドゥーラ=スコダ
監訳:今井顕
翻訳:堀朋平、西田紘子
発行:音楽之友社
発売日:2016年4月21日
サイズ:23cm、669ページ

ウィーンの伝統を受け継ぐ巨匠バドゥーラ=スコダ夫妻が、モーツァルト作品の演奏法と解釈を、長年の研究をもとにまとめる。装飾音や強弱など、モーツァルト様式の実践的なアドバイスが満載。参考音源はダウンロード可能。



8位:文様別小皿・手塩皿図鑑 佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション

監修・執筆:大橋康二
発行:青幻舎
発売日:2014年5月26日
サイズ:15cm、311ページ

佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション(国登録有形文化財)より、小皿・手塩皿906点を厳選し、項目ごとに解説・作品データを付す。古伊万里の深い世界を堪能できる一冊。



9位:美の朝焼けを通って シュタイナーの芸術観

著者:今井重孝、はたりえこ
発行:イザラ書房
発売日:2019年7月8日
サイズ:21cm、126ページ

シュタイナー夫妻が生み出した舞踏芸術「オイリュトミー」は、なぜ未来の芸術と呼ばれるのか。シュタイナー思想の2人のスペシャリストの対談と往復書簡を収録。オイリュトミーと脳波の関係、意識魂の時代についても解説する。



9位:ゴースト・ハンターズ完全読本 怪異を追う者たち─『事件記者コルチャック』から『死霊館』まで

編著:尾之上浩司
発行:洋泉社
発売日:2018年2月8日
サイズ:21cm、271ページ

カール・コルチャック、エド&ロイレン・ウォーレン夫妻という、2大ゴースト・ハンターズの軌跡と活躍を網羅。ほか、おすすめのゴースト・ハンターもののドラマ、ロバート・E・ハワードの未訳小説「同志の刃」も掲載。



9位:西表島・紅露工房シンフォニー 自然共生型暮らし・文化再生の先行モデル

著者:石垣昭子、山本眞人
発行:地湧社
発売日:2019年3月10日
サイズ:19cm、294ページ

西表島でさまざまな天然素材を使って手紡ぎ手織り、草木染の工房を営む染織家、石垣昭子・金星夫妻の暮らしと仕事をまとめた一冊。その作業の全貌を写真と共に紹介するほか、自然観や生き方についてのインタビューなども収録。





artscape編集部のランキング解説

世田谷美術館で2021年3月20日から始まった「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話」展。フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルト(1898-1976)とその妻のアイノ(1894-1949)が出会い、活動を共にした25年間に焦点を当て、二人のものづくりの軌跡を俯瞰する展覧会です(※展覧会図録はこちら)。
「夫妻」というキーワードで抽出された今回のランキングには、古今東西さまざまな夫妻が登場。彼・彼女らの、芸術における創造的な連帯のあり方や関係性の多様さが浮かび上がってきました。1位に輝いた『愛の手紙 作曲家・古関裕而と妻・金子の物語』をはじめとして、その夫妻が生きた時代特有の空気も時折見えてきます。
注目してみたいのは、佐賀県立九州陶磁文化館に計10,311点にも及ぶ有田磁器のコレクションを寄贈した、柴田夫妻(柴田明彦[1940-2004]・祐子[1944-]両氏)に関係する本が2冊ランクインしているところ(5位、8位)。体系的かつ網羅的に収集されたそのコレクションは学術的にも非常に重要なコレクションとして位置付けられており、佐賀県立九州陶磁文化館には柴田夫妻コレクション専用の展示室も常設されています。柴田夫妻の収集にかける並々ならぬ情熱を入り口に、古伊万里の魅力に触れてみるのもまた一興。
時代を大きく遡って奈良時代、『すぐわかる正倉院の美術 見方と歴史 改訂版』(3位)においてゆかりの品を多数取り上げられている聖武天皇と光明皇后も、ある意味「コレクター夫妻」と呼べるのかもしれません。聖武天皇を亡くした光明皇后が、彼の冥福を祈って愛用の品を収めたのがその始まりとされる正倉院。先述のガイドブックは「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」などをはじめとした美麗な美術工芸品の数々をそのディテールまで楽しめる一冊です。
共に制作活動を展開するアーティスト/職人夫妻の姿をテーマにした本もやはり複数ランクイン。『《原爆の図》のある美術館 丸木位里、丸木俊の世界を伝える』(6位)では、共同制作《原爆の図》を「誰でもいつでもここにさえ来れば見ることができるように」と、埼玉県東松山市に原爆の図丸木美術館をオープンさせた画家の丸木位里(1901-95)・俊(1912-2000)夫妻の生涯や、3.11以降改めて注目が集まる《原爆の図》の制作背景や過程について、丸木美術館の学芸員の視点を通して語られます。一方で、西表島で染色織物工房を営む石垣金星(1946-)・昭子(1938-)夫妻の暮らしを追いかけた『西表島・紅露工房シンフォニー 自然共生型暮らし・文化再生の先行モデル』(9位)は、西表島の生き字引きでもある二人の、つくり手としてのサステナブルな姿勢が示唆に富む一冊。
夫妻という単位で仕事を残している上記の人々から共通して感じられるのは、補い合うという行動のナチュラルさ。今回は「夫妻」縛りでランキングを見てみましたが、今後さらに多様な連帯のしかたが広がることも、併せて願いたいところです。


ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「芸術・アート」キーワード「夫妻」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2020年3月10日~2021年3月9日〉

2021/04/01(木)(artscape編集部)

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