artscapeレビュー

岡本光博 「オキナワ・ステーキ」

2021年04月01日号

会期:2021/02/06~2021/02/27

eitoeiko[東京都]

「オキナワ」をモチーフにした岡本の個展。岡本と沖縄といえば、2017年に沖縄の伊計島にあるスーパーのシャッターに、墜落するヘリコプターやパラシュートなどを黄地に黒でペイントした《落米のおそれあり》(2017)を発表して物議を醸したことが記憶に新しい(その2年後、同作品は「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」に出品され、さらに有名になった)。しかし岡本と沖縄の関係はさらに10年以上も前に遡り、2004年から2年ほど岡本が沖縄の大学の非常勤講師を務めていたときに始まるという。今回の出品作品も《落米のおそれあり》を除き、大半はこの時期につくられたものだ。

展覧会名にもなった《OKINAWAN STEAK》(2005)は、日米のコックが巨大なステーキを料理する姿をポップに描いた作品で、このコックは沖縄の有名な2店のステーキハウスの看板から引用したものだという。ステーキは沖縄本島のかたちをしており、日米に翻弄される現状を表わしている。街で見かける「工事中」の看板が「演習中」に書き換えられている作品も2点ある。「ご迷惑をおかけします」と書かれた言葉の下には、それぞれ兵士姿の白人と黒人がおわびしている。床には赤く塗られた紙が数百枚、赤絨毯のように敷かれているが、これは摩文仁の丘に建つ戦没者24万人の氏名が刻まれた「平和の礎」を赤鉛筆でフロッタージュしたもの。そのとき削った赤鉛筆のカスを泡盛の小瓶に詰めた作品もある。

《to MANKO》(2005)と題された映像は、那覇にある前島アートセンターから漫湖までボートで川沿いに遡上するパフォーマンスを記録したもの。しばらく見ていたけど、映像そのものはおもしろくもなんともない。漫湖は現在ラムサール条約にも登録される干潟になっているが、別に環境保護を訴えるわけでもなく、ただ漫湖に行ってそれをタイトルに使いたかっただけなのでは? こういう下ネタも岡本の得意とするところだ。ちなみに同展をキュレーションした工藤健志氏は展覧会名を「to MANKO」にするつもりだったが、広報がやりにくくなるのでやめたらしい。「オキナワ・ステーキ」なら「沖縄・素敵」とも読めるし。

この個展にあわせ、渋谷の水野学園に併設されたHOLE IN THE WALLという展示スペースでも「MUNI」と題する個展を開催しているので(2/15-27)、ついでに足を伸ばしてみた。こちらは岡本のもうひとつの得意技であるブランドいじり。「MUNI」とは無印良品とユニクロを合体させた偽ブランドで、実際に両製品を半分ずつ使ってシャツやパンツを仕立て上げている。ほかにも、サンローランやポール・スミスなどブランドタグをつぎはぎして一枚のシャツに仕立てたり、ルイ・ヴィトンのロゴの入った革でバッタをつくったり、いじり放題。さらにブランド企業から送られた抗議や警告文をそのまま大理石に刻字した「作品」もあって、とても楽しめる。


MUNI

会期:2021年2月15日(月)〜27日(土)
会場:HOLE IN THE WALL(東京都渋谷区渋谷1-20-5)

2021/02/24(水)(村田真)

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