artscapeレビュー

T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO

2021年12月01日号

会期:2021/10/22~2021/10/31

東京スクエアガーデンほか[東京都]

写真雑誌や写真教室を企画・運営してきたシー・エム・エスを母体とするTOKYO INSTITUTE PHOTOGRAPHYが主催する写真イベント「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」が、東京駅周辺のいくつかのスペースを会場として開催された。同イベントは2017年には上野公園界隈で開催されたこともあり、地域的に拡散しがちな写真フェスティバルを、限られた場所に集約して行なうというアイデアは悪くないと思う。今回は「仮囲いやオフィスビルの公共空間(公開空地等)を使い、東京という都市を見つめてきた日本の写真家たちの作品と言葉を『雑誌』のように展示」するという「Tokyo Photographers Wall Magazine 2021」を中心に、いくつかの写真展、フォトマーケット、オンライントークなどが開催された。

予算規模の問題が大きいのだろうが、残念なことに活気のあるイベントとしては成立していない。石川直樹、尾仲浩二、藤岡亜弥、野村佐紀子、有元伸也、山谷佑介、インベカヲリ★など、いいメンバーが参加しているにもかかわらず、彼らの写真や言葉を一定のスペースに囲い込み、同じレイアウトで提示することで、メッセージが均一化してしまっているのだ。30人ほどの展示パネルを、バラバラに見せるだけでは物足りなさが残る。もっと人数を増やすか、逆に絞り込んで一人あたりの点数を増やすことも考えられそうだ。これも管理上むずかしいかもしれないが、ゲリラ的に建物や街路全体を埋め尽くすような展示ができないだろうか。とはいえ、このような企画にまったく可能性がないとは思えない。展示場所の設定を含めて、試行錯誤を繰り返すことで、実りの多い成果に結びつくことを期待したいものだ。

公式サイト:https://t3photo.tokyo

2021/10/24(日)(飯沢耕太郎)

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