artscapeレビュー

写真新世紀 2021

2021年12月01日号

会期:2021/10/16~2021/11/14

東京都写真美術館地下1階展示室[東京都]

キヤノン主催で、1992年から開催されてきた「写真新世紀」展(公募のスタートは1991年)は、本年度で終了することになった。立ち上げの第1回展から2009年まで審査員としてかかわってきた筆者にとっては、感慨深いものがある。本年度の審査員はライアン・マッギンレー(写真家)、オノデラユキ(写真家)、清水穰(写真評論家)、グエン・リー(シンガポール国際写真祭 アーティスティック・ディレクター)、椹木野衣(美術評論家)、安村崇(写真家)、横田大輔(写真家)の7名、優秀賞を受賞したのは賀来庭辰「THE LAKE」(椹木野衣選)、千賀健史「OS」(オノデラユキ選)、テンビンコシ・ラチュワヨ「Slaghuis Ⅱ」(清水穰選)、中野泰輔「やさしい沼」(ライアン・マッギンレー選)、光岡幸一「もしもといつも」(横田大輔選)、ロバート・ザオ・レンフイ「Watching A Tree Disappear」(グエン・リー選)、宛超凡「河はすべて知っている――荒川」(安村崇選)だった。

結果的には、11月12日の公開審査会で賀来庭辰の「THE LAKE」がグランプリに選出された。だが、他の作品との差はあまり感じられず、どの作品が選ばれたとしても、胸のすくような成果になるとは思えなかった。優秀賞受賞作は、それぞれきちんと自分のやりたいことを成し遂げ、写真作品(賀来、レンフイは動画による映像作品だが)としてのレベルを保っている。だが、同館の3階展示室で開催されていた「記憶は地に沁み、風を越え」と同様に、表現上の冒険や実験意欲よりも「個人的な体験を基点として、他者との関係のあり方を丁寧に模索し、写真作品として再構築していこうとする方向性」が強まってきているように感じる。中野や光岡のように、画像をかなり改変している作家もいるのだが、それも予測の範囲におさまっているのだ。1990年代以来、デジタル化、アート化の時代の最前線を駆け抜けてきた「写真新世紀」展が、「地に足をつけた」ものになってきているのはやや寂しい気もする。だが逆にいえば、写真家、アーティストたちの表現意欲を受け止める器として機能してきた同展が、その役目を果たせなくなってきたことが、終了という判断に結びついたということではないだろうか。

公式サイト:https://global.canon/ja/newcosmos/

2021/11/07(日)(飯沢耕太郎)

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