2022年10月01日号
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artscapeレビュー

和歌山の近現代美術の精華 第2部 島村逢紅と日本の近代写真

2022年02月01日号

会期:2021/10/23~2021/12/19

和歌山県立近代美術館[和歌山県]

このところ、各地の美術館で、日本写真史を再構築する企画展が相次いでいる。和歌山県立近代美術館で開催された「和歌山の近現代美術の精華 第2部 島村逢紅と日本の近代写真」もそのひとつである。

今回スポットが当たったのは、和歌山市で清酒醸造業を営みながら、1910〜40年代にアマチュア写真家として広く活動した島村 逢紅 ほうこう (本名は安三郎、1890-1944)である。1912年に和歌山で結成された写真家団体、木国写友会のリーダー的な存在としてその名前は知られていたが、彼の仕事の全体像を見る機会はこれまでなかった。ところが、最近になって島村家の蔵の中を再調査したところ、5,000点以上の写真作品だけでなく、写真雑誌を含む蔵書、手紙、手帳、撮影のための小道具など、大量の資料が見つかった。本展はそれらを元にして、島村逢紅の写真作品約200点を中心に、同時代の日本の近代写真の担い手だった野島康三、福原信三、淵上白陽、安井仲治、さらに木国写友会のメンバーの島村嫰葉、島村紫陽らの作品約50点を加えて構成されていた。

展覧会を見て驚いたのは、島村逢紅が残した写真のクオリティの高さである。写真家としてのキャリアの初期に、萩原守衛や保田龍門の彫刻作品を撮影した習作から、風景、人物、静物まで作風の幅はかなり広い。また。ソフトフォーカスの「芸術写真」から、シャープなピント、抽象的な画面構成の「新興写真」風の作品、さらには広告写真への取り組みまで、技術的にも、スタイルにおいても、日本の写真表現の潮流をしっかりと受け止めて制作していたことがうかがえる。とはいえ単純に流行を追うだけではなく、独自のものの見方を品格のある画面にまとめ上げる力量が、並々ならぬものであったことが伝わってきた。「地方作家」のレベルを突き抜けた、同時代を代表する写真家のひとりといってよいだろう。

島村逢紅が残した膨大な写真・資料の調査・研究は、まだ緒についたばかりだ。本展を契機として、代表作を網羅した写真集の刊行を望みたい。

2021/12/18(土)(飯沢耕太郎)

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