artscapeレビュー

DODO EXHIBITION

2010年02月15日号

会期:2010/01/08~2010/01/10

ギャラリー街道[東京都]

写真家、尾仲浩二が主宰するギャラリー街道で「百々一家」の作品展が開催された。「百々一家」というのはビジュアルアーツ専門学校大阪の校長でもある百々俊二とその二人の息子たち、百々新、百々武の三人である。親子で写真家という例は、それほど多くはない。視覚的な才能が遺伝することはめったにないし、父親の仕事の大変さを身近に見ていると、別な道を選びたくなるのではないだろうか。「百々一家」の場合は、息子たちが同じ写真の世界でも、それぞれ父親とは違った方向に自分の才能を発揮するということがうまくいった希有な例だと思う。
今回の展示では百々新がカスピ海沿岸のロシア、アストラハンを撮影した《Caspian Sea- Russia》を、百々武が奈良県南部の集落や修験道の行事にカメラを向けた《八咫烏》のシリーズを出品している。しっかりと腰を据えたカラー・スナップで悪くはないが、「百々一家」の親分である百々俊二のモノクローム作品《1968─1969 飯塚─東京》でやや存在感が霞んでしまった。福岡県飯塚市の炭坑地帯の荒涼たる風景と、1969年の騒然とした学生デモの状況を体当たりで撮影した19~20歳頃の写真群だが、一人の若者が写真という表現手段を手にして、手探りで現実世界に肉迫していく切迫した感情のうねりが伝わってくる。この三人の写真があわさった時にあらわれてくる眺めはなかなか気持がいい。またいつか同じ顔ぶれの展示を見てみたい気がする。

2010/01/10(日)(飯沢耕太郎)

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