artscapeレビュー

DOMANI明日展2009 未来を担う美術家たち

2010年02月01日号

会期:2009/12/12~2010/01/24

国立新美術館[東京都]

文化庁による「芸術家在外研修(新進芸術家海外研修制度)」の成果発表展。12人の作家がそれぞれ作品を発表した。木製の廃材を高く積み上げて巨大な本棚を見せた高野浩子や、高層ビルが乱立する風景写真にレイヤーを重ね、求心力と遠心力を同時に体感させる安田佐智種などが見応えのある作品を見せた。それにしても展観を見終わって痛感するのは自律した批評の必要性だ。成果発表展という性格上、出品アーティストは短いコメントを発表させられていたが、「成果」を客観的に評価するには、観客や批評家による判断が不可欠である。だが、芸術家を海外に派遣する制度が確立されている一方で、そうした批評的な判断を成熟させる制度は十分に用意されていない。内容の如何が問われることがないまま、展覧会の履歴が自動的に更新されていき、その目録が新たな挑戦の資格となってしまう現状は、アーティストのみならず展覧会の企画者にとっても、彼らの表現がまっとうに吟味されないという点で、大きな不幸といえるのではないだろうか。

2010/01/11(月)(福住廉)

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