artscapeレビュー

メゾンダールボネマ&ニードカンパニー『リッキーとロニーのバラッド』

2010年02月01日号

会期:2010/01/16~2010/01/17

スパイラルホール[東京都]

現代ヨーロッパの舞台を見る度、ほぼ毎回出くわす一種のパターンがある。非人間化あるいは動物化と形容すればいいだろうか、理性を失った登場人物たちが次第に幼児化してゆき、また暴力性をむき出しにしてゆき、欲望のままに行動し始めるという流れだ。そして、たいていの場合、舞台後半になると役者は裸になる。本作もこのパターンに思えてしまった。若い男女がアパートに暮らしている。2人はほとんど外に出ない。妄想的な2人は隣人のパーティに翻弄されたり、幽霊のような赤ん坊の存在におびえたりする。原タイトルの副題に「ポップ・オペラ」とあるとおり、エレクトロ系のPC音楽を自ら操作して俳優2人はミュージカル風に歌う。シンプルな音楽は2人の内向的な暮らしにふさわしく見えた。最終的にアニメーションのなかで2人はアパートの窓から飛び降り自殺する(その後で飛翔のイメージが展開される)。甘美な絶望感。それは、リアルな絶望感が蔓延する日本で上演するとリアリティを感じられず、たんなる若い欧米人のファンタジーとしか映らなかった。

2010/1/17(日)

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