artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
戸谷成雄 森X
会期:2016/12/16~2017/02/05
シュウゴアーツ[東京都]
角材をチェーンソーで彫り刻んだ「森」シリーズの展示。機械で彫り込んだとは思えないほど心をざわめかせる表面だ。パッと見、旧作かと思ったら10作目だという。初期のころは1作ごとに彫りが深く激しくなっていったように記憶するが、近年は安定してきたのだろうか。1987年にシリーズの第1作を発表したというから、ならせば3年に1作のペース。全部並べたら壮観だろうな。
2016/12/21(水)(村田真)
鈴木理策「Mirror Portrait」
会期:2016/11/26~2016/12/24
タカ・イシイギャラリー東京[東京都]
肖像写真がずらりと並ぶ。が、伏し目がちだったりあらぬ方向を見ていたり、なにか違う。瞳を見ると白い点々が四角く映り込んでいる。じつはこれ、ハーフミラー越しに撮ったもの。ふつう肖像写真を撮るときモデルは撮影者と対面するけど、今回モデルは鏡に映った自分の顔を見ながら撮られたわけだ。もちろん撮られることは知っていたとはいえ、撮影者と対峙するのに比べてリラックスしているように見える。これは性格まで映し出されそうだな。奥の部屋に行くと周囲に電球のついた四角い鏡があった。瞳に映っていたのはこれだ。
2016/12/21(水)(村田真)
紙神
会期:2016/12/09~2016/12/18
東京都美術館[東京都]
これも都美セレクションで、こちらは紙を使った展覧会。いや、タイトルの「紙神」を「カミガミ」と読ませるくらいだから、紙と神を同一視しているわけで、紙を使わせていただいてる、または紙に使われてるというべきか。おみくじもあるが、引いた紙片を結んだ様子も無意識のインスタレーションといえるかもしれない。
2016/12/18(日)(村田真)
「日本画の王道」─11人の拓く日本画の現在─
会期:2016/12/06~2016/12/18
東京都美術館[東京都]
都美が選んだグループ展に会場をタダ貸しする「都美セレクション」のひとつで、「現在日本画研究会」という11人のグループ展。「現在日本画」を名乗るくらいだから革新系かと思ったら、日本画の範疇にすっぽり収まるいかにも日本画な絵ばかり。たしかに「日本画の王道」だ。1点だけ、海辺の風景を俯瞰した伴戸玲伊子の《流水譚》は、川や田畑に津波が押し寄せているようにも見え、妙に不穏な空気を漂わせている。
2016/12/18(日)(村田真)
シェル美術賞展2016
会期:2016/12/07~2016/12/19
国立新美術館[東京都]
シェル美術賞は1956年から断続的に続いてきた現代美術の公募展で、今年60周年、45回目を迎えたという。けっこうなことだが、応募数を見ると、00年代は千人前後から1500点ほどの応募があったのに、10年代から徐々に減り、今年は570作家による791点と半減しているのが気にかかる。とはいえ500人以上が応募するのだから大したもんだ。うち4人の審査員が選んた53点の作品と、過去の入選作家から選んだ4人の作品を展示。草花をのせたテーブル上の皿を真上から捉えた木村鮎子の《白昼夢のままごと》と、石膏像やイーゼルが立ち並ぶアトリエ風景を描いた椙山奈津子の《石こう室》は、どちらも装飾的・平面的で色彩も美しい。模様のついた布を部分的に脱色して木枠に張った池上怜子の《たがそで》は、装飾を扱いながら攻撃的で好ましい。以上3人とも島敦彦氏の選定。ぼくと趣味が似ているようだ。ほかに、時計を90度傾けて半分だけ描いた吉田一民の《絵画》、グラフィティをキャンバスに移植したようなしまだそうの《VITA NOVA Ⅰ》がよかった。
2016/12/17(土)(村田真)