artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ビヨンド・スタッフ

会期:2015/07/15~2015/08/22

ミヅマアートギャラリー[東京都]

アイ・ウェイウェイほか4人の中国人アーティストによるグループ展。入ってすぐのディスプレイには、2011年にアイ・ウェイウェイが投獄されたときの様子を再現?した映像が映し出され、導入部のイニシエーションとなっている。ギャラリーには、昨年の「中国現代美術賞」の15周年記念展に展示されるはずだったのに、当局により撤去されたアイ・ウェイウェイの作品が梱包されたままの状態で並んでいる。迫害を受けながらそれを次々と作品化していくのだから、中国にいる限りネタには困らないともいえる。困ったことだ。アイ・ウェイウェイのほかには、毛沢東の顔をモチーフにした大皿とか、民主的な投票により自分の身体を麻酔なしで切り裂いていく映像とか、胸くそ悪くなりそうな作品ばかり。もちろんなにがいいたいのかわからない作品よりはるかに有効だが。

2015/08/06(木)(村田真)

アーティスト・ラボII シミュレーションゲーム

会期:2015/07/18~2015/08/30

川口市立アートギャラリー・アトリア[埼玉県]

打ち合わせのため川口のアトリアへ。ここに来るのは7年ぶり。美術館としては小さすぎ、ギャラリーとしては大きすぎだが、逆にいえば小回りのきく美術館であり、多様な要望に応えられるギャラリーともいえる。いわば地域に開かれたアートの場といったところ。ワークショップなどを通してアーティストとともに作品や展覧会をつくっていく「アーティスト・ラボ」もそのひとつ。今回の「シミュレーションゲーム」は、「あなたがもし○○○だとしたら」という仮定のもとでなにかをつくっていく企画で、アーティストはMaS(T)A(五月女哲平+森田浩彰)と山本高之の2組。それぞれ「旅したつもりになってみよう」「きみのみらいをおしえます」というテーマを設けている。わざわざ遠くから見に行くもんではないけれど、近所の人たちは喜ぶだろう。

2015/08/06(木)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00031418.json s 10114892

アーティスト・ファイル2015 隣の部屋──日本と韓国の作家たち

会期:2015/07/29~2015/10/12

国立新美術館[東京都]

今年は「アーティスト・ファイル」の拡大版で、日韓の国立美術館が共同制作し、それぞれ6人ずつ計12人を選んでいる。日本人は小林耕平、手塚愛子、冨井大裕、南川史門、百瀬文、横溝静の6人で、作品はだいたい想像がつくだろうから省略。雑だなあ。韓国人は大半が初めてだが、名前を連ねても意味ないので、興味深いのを3人ほど。キ・スルギは写真で、とくに「ポスト・テネブラス・ラクス(Post Tenebras Lux)」シリーズは、人けのない森や林道に浮かぶぼんやりした不定形のかたまりを撮ったもの。おそらく薄い布みたいなものを振り回して長時間露光で撮影したと思われるが、不気味でありながらどこかユーモラスでもある。イ・ヘインは100点を超す風景画などの油絵を壁に掛け、床にキャンプ用のテントを張っている。彼女はここ数年、画材とテントを持って各地を放浪しながら絵を描いてきたストリート・ペインター。ストリートに描くのではなく、ストリートでストリートをキャンバスに描くのがおもしろい。ってか、これって印象派と同じかい。イ・ウォノはホームレスから段ボールの家を購入し、その段ボールで巨大な家を再構築し、あわせて購入金額も提示している。その金額を見るとだいたい3千円前後が多いが、ひとりだけ2万円を要求してるヤツがいた。それはともかく、こうして見ると韓国のほうがストリート系が多くて楽しそう。

2015/08/05(水)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00031874.json s 10114891

絵画を抱きしめて Part1:絵画との出会い

会期:2015/07/31~2015/08/23

資生堂ギャラリー[東京都]

阿部未奈子、佐藤翠、流麻二果という3人の絵画展。ギャラリーによれば、3人に共通する特徴は「作品自体が非常に大きいこと」というミもフタもないもの。たしかに阿部と佐藤は具象っぽいけど流は抽象的だし、佐藤と流はペインタリーだけど阿部はフラットだし、流と阿部は水平志向だけど佐藤は垂直志向だし、最大公約数がつかみにくい。でも3人とも作品に華があるのが特徴で、それが3人を選んだ理由ではないかしら。資生堂ですもの。

2015/07/31(金)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00031858.json s 10113499

“Dreams” PITS

会期:2015/07/17~2015/08/01

メグミオギタギャラリー[東京都]

天使像やキャンベル・スープ缶の版画に彩色したシリーズ。モチーフもステンシル技法もアイロニーもバンクシーそっくりだが、PITSは名古屋を中心に活動しているストリートアーティストらしい。最近のストリートアーティストやグラフィティライターは、キャンバスに描いたりコマーシャルギャラリーで作品を売ることに抵抗ないんだろうか。ちなみにPITSとはオーケストラピットともいうように、くぼみや落とし穴、地獄といった意味の複数形。

2015/07/31(金)(村田真)