artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

No Museum, No Life? ──これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会

会期:2015/06/16~2015/09/13

東京国立近代美術館[東京都]

国立美術館5館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館)の作品を紹介する展覧会。どうせ予算がないから身内のコレクションをかき集めてお茶を濁そうって魂胆かと思ったら、これが意外なほどおもしろかった。構成は事典のようにAtoZ形式で、Architecture、Archive、Artistに始まり、X-ray、You、Zeroまで(最後は苦しいが)、各項目に沿って5館の所蔵作品と資料を公開しながら「美術館」のあれこれを解説している(新美術館はコレクションがないので資料のみの出展)。例えば「Artist」では、17世紀のクロード・ロランの版画《素描する芸術家のいる海辺》(西洋)から、竹内公太の「指さし作業員」でにわかに注目されるようになったヴィト・アコンチのビデオ《センターズ》(東近)まで、自画像を中心に紹介。「Curation」では、まさにこの展覧会の設計図が示され、その会場マケットが隣の「Discussion」に出ているリアム・ギリックの《ディスカッション・アイランド・レスト・リグ》(国際)のテーブル上に置かれ、入れ子状になっている。「Earthquake」には池田遙邨による関東大震災のスケッチ(京近)、宮本隆司による阪神大震災の記録写真(東近)、それにジャン・アルプがヨレヨレの線で描いた《地震による線のある頭部》(東近)や、免震台(西洋)まであるが、東日本大震災関連はない。まだコレクションされてないんでしょうね(常設展示室にはChim↑Pomの映像があったが)。注目すべきは「Money」で、ルーヴル美術館、MoMA、国立美術館5館合計の各収入と内訳をグラフで比較している。それによると、ルーヴルの収入は308億円で、その半分以上が国から出ているが、4割くらいは展示事業収入など自分で稼いでいるのに対し、MoMAの収入は190億円で、約3分の2を自分で稼ぎ、3分の1は基金運用益や寄付などに頼っている。日本の5館はどうかというと、収入は合計で121億円(5館合計でMoMAの3分の2以下!)、うち自分で稼いでるのは10分の1程度にすぎず、大半が交付金・補助金頼り。こんな自虐ネタさらして委員会? 最後に、もっともこの展覧会の利点を生かしたのが「Storage」。コレクションを有する4館が共通して持ってる藤田嗣治の絵画1点ずつを、その作品が保管されている収蔵庫の写真とともに展示しているのだ。注目したいのは、東近から出ている初期の《パリ風景》の下に、小川原脩による戦争記録画《アッツ島爆撃》が見えること。なんでテーマも制作年も名前も離れてるのに隣り合わせなんだろう? アッツ島つながりか? と考えてしまった。そういえば「War」がなかったな。

2015/06/15(月)(村田真)

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黄金展

会期:2015/06/11~2015/06/15

日本橋高島屋8階 催会場[東京都]

向山展の上階でやってたんでのぞいてみる。東京タワー、力道山、七福神、仏像、十二支、カブトムシ、茶道具、楽器、キティ、ミッキー、ウルトラマン、セブン、ガラモン、カネゴンなど、金にふさわしいというより、金にしてみたいモチーフを実際に金にしてみた商品の展示即売会。見た限りいちばん高かったのは力道山の等身大黄金像(ただし金箔)で、1,944万円。純金製の1円玉はなかったなあ。

2015/06/13(土)(村田真)

向山裕「砂の原野・霊告II」

会期:2015/06/10~2015/06/29

日本橋高島屋6階 美術画廊X[東京都]

イカやカツオノエボシといったちょっと変わった海洋生物や、アホウドリの模型などを描いている。半分くらいはユマニテ東京で見たことあるなあ。最近「マグリット展」を見たせいもあるが、背景の処理などがマグリットを思い出させる。マグリットはメインのモチーフ以外はいい意味で適当に描いている。モチーフを生かすため背景描写にのめり込まず、あっさりとした状況説明で止めているのだ。向山も砂浜や海原など、いってしまえばどうでもいい風景描写が巧みになった。そもそもカツオノエボシなんか存在そのものがシュールだから、背景はさりげないほうがいい。

2015/06/13(土)(村田真)

合田佐和子「喜びの樹の実のたわわにみのるあの街角で出会った私たち もう帰る途もつもりもなかった」

会期:2015/05/26~2015/06/14

みうらじろうギャラリー[東京都]

1994年以降に撮られたバラの花の写真と、それをもとに描いた花の絵。これらの写真は絵を描くための素材として撮りためたもので、見せるつもりはなかったという。それにしても、どうして女性が花の絵を描く(または写真を撮る)と情念的というか、肉感的になるんだろう。ありていにいえば女性器に見えるわけだけど、そうでなくてもどこか温もりが感じられるのだ。アラーキーが撮ってもメイプルソープが撮ってもそうは感じられないのに。花に囲まれて1点だけ、グレタ・ガルボと卵の組み合わせがあった。合田人気に加え、最終日に近いせいか人が多い。ちょっと着飾った男が熱心に見ていて、ときおり画廊の人に野太いオネエ言葉で質問していた。帰りぎわチラッと見たら美川憲一だった。

2015/06/13(土)(村田真)

眞島竜男──無題(Live Die Repeat)

会期:2015/05/23~2015/06/20

タロウナス[東京都]

トム・クルーズが出演する映画ポスター全36点を展示。1999年にアートイング東京で発表した作品に、新作ポスターを追加したものだが、よく見ると『トロピック・サンダー』と『ゴールドメンバー』の2枚のポスターにはトム・クルーズの顔も名前も載ってなかった。気になったので帰って調べたら、どちらにもほんの少し出演していたことが判明。ということは、顔も名前もどーでもいいのね。

2015/06/13(土)(村田真)