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村田真のレビュー/プレビュー

TWSエマージング2015

会期:2015/05/23~2015/06/21

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

謝花翔陽「芸術≒呪術の関係性を熟考する」。大崎土夢「2、3秒前に考えたことを忘れる」。笹本明日香「わたしだけが異星人」。三者三様の思考と作品を比べるのはおもしろいけど、それぞれ個展としてみるとものたりない。

2015/06/05(金)(村田真)

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椛田ちひろ──Following the Shadow

会期:2015/05/29~2015/06/21

アートフロントギャラリー[東京都]

ボールペンで描くというか塗るというか引くというか、とにかくインクの線で面を埋めていく作業。塗り込められた中心部は黒々(正確には濃い青紫)しているが、周縁は線がまばらになるので髪の毛か、もっと離れれば雲か波のようにも見えてくる(タイトルから察するに作者は影を意識したらしい)。圧巻は、全長20メートルはあろうかという鉄板の表面にドローイングしたもの。鉄板は渦巻き状に床に置いてあるので、全体を見るにはグルッと回り込まなければならない。線の束もうねってるように見えるので、支持体と表面が呼応しているともいえる。しかしこれは会期後どうやって保管するんだろうと、余計な心配。

2015/06/05(金)(村田真)

久松知子「美術家の幸福論!」

会期:2015/05/29~2015/06/14

六本木ヒルズA/Dギャラリー[東京都]

第18回岡本太郎現代芸術賞の「岡本敏子賞」受賞記念展。美術家は必ずしも幸せな人生を送るわけではなく、むしろ不幸な美術家ほど大成してるのではないか? との疑問から、今回は「美術家の幸福」をテーマにしている。「幸福への試論:画家に聞く」のシリーズは、平山郁夫、藤田嗣治、横山大観、松本竣介の4人がそれぞれ自作を背に食事を準備する場面を描いたもの。平山は高価な群青をふんだんに使ったシルクロードの絵の前で、白飯にアジの開きや卵焼きという和風料理、藤田は《アッツ島玉砕》の前でクロワッサンとカフェオレ、大観はたくさんの富士山の絵をバックに鯛で日本酒を一杯、竣介はニコライ堂らしき絵の前にフルーツポンチが置いてある。なんでフルーツポンチだろうと思ったら、彼は「フルポン(フルーツポンチの略)」と呼ばれていたらしい。よく調べているし、アイロニーも効いている。100号の大作《岡本太郎と誕生日会》は、赤いジャージの作者が正装した岡本太郎と円卓を囲み、誕生会を祝ってるところ。円卓の上には大きなイチゴケーキに《重工業》のネギ、犠牲の子羊、底に顔があってもいいウィスキーグラスなどが置かれている。これは楽しい。《美術家の幸福祈願》は、作者を含めた日本の若手美術家たちが20人ほど宝船に載っている巨大な絵馬。沈没しないよう祈る。その回りにも小さな絵馬がたくさん飾ってあって、1万円くらいから買える。日本画出身では久々の逸材。

2015/06/02(火)(村田真)

サンドラム 台北滞在報告会

会期:2015/05/31

BankARTスタジオNYK カフェ[神奈川県]

台北国際芸術村(TAV)とBankARTが相互に選んだアーティストを3カ月間ずつ交換するレジデンス・プログラムで、10回目の今回、日本からノリのいい音楽集団サンドラムが派遣された。報告会は、9人のメンバーがTAVにとどまらず台湾中をヒッチハイクで回ったりしたのでにぎやかだが、カエル食ったとかサル食ったとか、どこそこのオッサンは首狩り族だったとか内輪話が多く、なかなか先へ進まない。でもときおり披露してくれる現地で覚えた歌は、さすがに見事。楽譜もなく口承なのになんで何曲も覚えられるのか、音楽脳が欠如したぼくには不思議でならない。ちなみに歌詞はカタカナで書き取っていたようだが、メンバーによって表記が異なっているのがおもしろい。

2015/05/31(日)(村田真)

夜の画家たち──蝋燭の光とテネブリスム

会期:2015/04/18~2015/06/14

山梨県立美術館[山梨県]

ふくやま美術館と同館のみで開かれ、大都市には巡回しない展覧会。遠いので迷っていたが、八王子に行くついでに(というには遠すぎるが)思い切って行ってみた。明治以降の洋画、日本画、浮世絵を中心に、夜景や明暗を強調した表現を集めたもの。サブタイトルにある「テネブリズム」とは、闇のなかから光を当て人物を劇的に浮かび上がらせる17世紀バロック絵画に特徴的なスタイルのこと。イントロは、東京富士美術館から借りたラ・トゥール《煙草を吸う男》から。西洋絵画はこれとレンブラントらの版画が数点あるくらいで、あとは日本の近代絵画が占めている。なかでも注目すべきは高橋由一、山本芳翠、中丸精十郎、本多錦吉郎ら、明治初期の油彩画。黒田清輝が印象派(もどき)を輸入する以前だし、もともと暗褐色なうえに夜景を描くもんだからよけい暗い。近代日本は光の発見以前に闇の発見をしたんじゃないかとさえ思えてくる。とくに、人物を完全なシルエットとして闇に沈めてしまった由一の《中州月夜の図》、夜桜よりかがり火と観客のシルエットが印象的な印藤真楯の《夜桜》、童話のイラストみたいな前田吉彦の《勧学夜景図》、ワーグマンに学んだ小林清親のちょっと不気味な油彩画《燈火に新聞を読む女》《婦人像》など、レアものがそろう。ほかにも高島野十郎の《蝋燭》《満月》《太陽》をはじめ、ただならぬ妖気を漂わせる甲斐庄楠音の《幻覚》、自分の頭部の影だけを描いた原撫松の《影の自画像》など見どころたっぷり。ひとつ難点をいえば、夜景が多いので画面が暗いため、額縁の保護ガラスが反射して絵が見えづらいこと。でもさすがに高橋由一作品は高価な無反射ガラスを使ってるようで見やすかった。

2015/05/29(金)(村田真)

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