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夜の画家たち──蝋燭の光とテネブリスム

2015年06月15日号

会期:2015/04/18~2015/06/14

山梨県立美術館[山梨県]

ふくやま美術館と同館のみで開かれ、大都市には巡回しない展覧会。遠いので迷っていたが、八王子に行くついでに(というには遠すぎるが)思い切って行ってみた。明治以降の洋画、日本画、浮世絵を中心に、夜景や明暗を強調した表現を集めたもの。サブタイトルにある「テネブリズム」とは、闇のなかから光を当て人物を劇的に浮かび上がらせる17世紀バロック絵画に特徴的なスタイルのこと。イントロは、東京富士美術館から借りたラ・トゥール《煙草を吸う男》から。西洋絵画はこれとレンブラントらの版画が数点あるくらいで、あとは日本の近代絵画が占めている。なかでも注目すべきは高橋由一、山本芳翠、中丸精十郎、本多錦吉郎ら、明治初期の油彩画。黒田清輝が印象派(もどき)を輸入する以前だし、もともと暗褐色なうえに夜景を描くもんだからよけい暗い。近代日本は光の発見以前に闇の発見をしたんじゃないかとさえ思えてくる。とくに、人物を完全なシルエットとして闇に沈めてしまった由一の《中州月夜の図》、夜桜よりかがり火と観客のシルエットが印象的な印藤真楯の《夜桜》、童話のイラストみたいな前田吉彦の《勧学夜景図》、ワーグマンに学んだ小林清親のちょっと不気味な油彩画《燈火に新聞を読む女》《婦人像》など、レアものがそろう。ほかにも高島野十郎の《蝋燭》《満月》《太陽》をはじめ、ただならぬ妖気を漂わせる甲斐庄楠音の《幻覚》、自分の頭部の影だけを描いた原撫松の《影の自画像》など見どころたっぷり。ひとつ難点をいえば、夜景が多いので画面が暗いため、額縁の保護ガラスが反射して絵が見えづらいこと。でもさすがに高橋由一作品は高価な無反射ガラスを使ってるようで見やすかった。

2015/05/29(金)(村田真)

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