artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

同時代の眼V「ブリンキー・パレルモ」

会期:2015/05/11~2015/06/26

慶應義塾大学アート・スペース[東京都]

ハミッシュ・フルトン、スタンリー・ブラウンとダニエル・ビュレン、ブルース・マクレーン、イミ・クネーベルと続いてきた、いささか偏りのある「同時代の眼」シリーズの最終回。パレルモは、サイズも形態もミニマルな作品ばかり残して33歳で逝ったドイツのアーティスト。悪い作品とは思わないけど、過大評価されてなくね?

2015/05/15(金)(村田真)

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今井俊介、岡崎乾二郎、大山エンリコイサム展

会期:2015/05/09~2015/06/06

タクロウソメヤコンテンポラリーアート[東京都]

南麻布に移転して初訪問。似て非なる3人のアーティストの取り合わせは絶妙だ。絵具をベッタリ塗りつけた小型のキャンバスを数点ずつ並べた岡崎、独自のシステムで数種類の旗がはためくような色面を構成している今井、グラフィティ特有のストロークをペインティングに採り入れた大山と、甲乙つけがたい作品ばかり。似て非なると書いたが、いずれも制作を外的なシステムや既存の形式にある程度ゆだねている点で、非て似なるというべきかもね。

2015/05/15(金)(村田真)

吉本伊織「涙をたたえて微笑せよ」

会期:2015/05/04~2015/05/24

高架下スタジオ・サイトAギャラリー[神奈川県]

2012年に黄金町にやってきて、この6月なぜか天草に去っていく吉本の、とりあえず横浜最後の個展。作品は15点ほど。いずれもモノクロームに近い風景画で、水平線が見えたり、雪が降っていたり、どちらかというと日本海側っぽい侘しい光景だ。キャンバスはほとんど用いず、パネルに綿布を張ってアクリル、黒鉛、墨汁、顔料などで描くため、日本画のような印象を受ける(のがタマにキズだが)。その朴訥な画面からも、ナイーブすぎるタイトルからも、作者の純朴な一面がうかがえる。

2015/05/14(木)(村田真)

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笹川治子 個展「ロボッツ」

会期:2015/05/08~2015/05/24

ヨシミアーツ[大阪府]

全長6メートルの透明なビニール製の《うつろ戦士》を中心とする展示。このバカでかい人形、内部は空気だから中身は空っぽで、所在なさげに横たわってる。ここから二つのことが読み取れる。ひとつは、戦士は命令に従うだけで自分で勝手に考えたり行動したりできない「殺人ロボット」だから、文字どおり「うつろ」な存在でなければならなかったこと。図体はでかいけど中身は軽いデクノボウなのだ。もうひとつ、戦時中は軍も政治家も国民もだれひとりまともな判断ができず、みんな「空気」ばかり読んでいた。その「空気」のかたまりが戦士の姿を借りてること。これは戦前戦中の空気に近づく現代日本への痛烈な批評でもある。ほかに目に止まったのが、画面全体にモザイクのかかった映像作品。かなり粗いモザイクなのでなにが映ってるのかわからないけど、なんとなく爆発シーンのようだ。モザイクはある大きさを超えると細部がわからなくなり、ゴミも死体もエロもキノコ雲も四角い色彩の羅列となって、美しいオプティカル・アートと化す。これは使えそう。

2015/05/08(金)(村田真)

マイク・カネミツ/金光松美──ふたつの居場所

会期:2015/04/24~2015/05/16

大阪府立江之子島文化芸術創造センター[大阪府]

3年前、大阪府立現代美術センターに代わってオープンした江之子島文化芸術創造センターへ。大阪府のコレクションによる約40点の中規模な回顧展をやっていた。金光の名はぜんぜん知らなかったけど、抽象表現主義の画家として活躍した人らしい。1922年に広島に生まれ、16歳で渡米し、50年代にニューヨークで抽象表現主義の絵画を制作。65年にロサンゼルスに移り、92年に死去。つまり戦後アメリカのアートシーンのど真ん中にいたわけだが、その割に知られてないのは作品のせいもあるけど、遅れてきた日本人だからかもしれない。具象から抽象に転じたのは50年代なかば、すでに抽象表現主義もピークをすぎるころ。しかも日本人が追随しても追いつけないというか、追い越さなければ評価されなかったでしょうね。だいたいニューヨーク時代はフランツ・クラインかクリフォード・スティルを思い出させ、西海岸以降はサム・フランシスかポール・ジェンキンスを彷彿させるし。でも60年代の《5-5》《5月の夢》《私、OK?》あたりはまだ画面構成のおもしろさがあるのだが、70-80年代になると叙情に走り、晩年には絵具の滴りで星を暗示する類いの陳腐な宇宙的表現に陥ってしまう。それでも人脈が広いうえ(国吉康雄、ポロック、ラウシェンバーグ、ハロルド・ローゼンバーグ、吉原治良、森田子龍、藤枝晃雄……)、日本的な墨の芸術を連想させることもあってか、50年代からほぼ毎年のように個展を開催。98年には大阪と広島の美術館で回顧展を開いてる。この手の画家、発掘すればまだいるのかも。

2015/05/08(金)(村田真)

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