artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
村田峰紀「生PUNK」
会期:2015/03/14~2015/04/04
ギャラリー・ハシモト[東京都]
ボールペンによるドローイング。というとお手軽そうに聞こえるが、そんな生やさしいもんではない。ドローイングされたベニヤ板は表面がえぐられ、ささくれ立ち、穴が開き、原形をとどめないほど破壊されてるものもある。奥の暗室には液晶テレビが7台ほど置かれているが、これもすべてディスプレイがボールペンで引っ掻き回されて画面がはがれ、きれいな虹色の抽象パターンが表われている。わずかに「クレヨンしんちゃん」や報道番組の画像がかいま見えるのが無惨だ。「パフォーマンスの痕跡」としての作品はしばしば見かけるが、これほどストレートに行為が「痕跡」した例はめったに見ない。
2015/04/03(金)(村田真)
像形人間
会期:2015/03/31~2015/04/19
みうらじろうギャラリー[東京都]
木村了子、関本幸治、藤井健仁、松山賢による「人間像」の展示。手づくりの人形や小道具を使ってあたかも肖像写真のような作品をつくる関本は、写真作品のほかに撮影に用いた椅子も出品。ほかの作品に比べると破格の安さだが、椅子だよ。鉄板を叩いて有名人の顔にする藤井は、東電のトップだった勝俣某の顔を彫刻した《T.K. 鉄面皮》を出している。だいたい彼のつくる顔彫刻は悪人面が多いが(タイトルが「鉄面皮」だし)、こいつの顔はとりわけずる賢そう。もちろん見る側の思い込みも反映されてるのかもしれないが。T.K.本人は自分の顔がこんな「鉄面皮」になって人前にさらされてるなんて思ってもみないだろうなあ。
2015/04/03(金)(村田真)
石田尚志──渦まく光
会期:2015/03/28~2015/05/31
横浜美術館[神奈川県]
いつだったか忘れたけれど、最初に石田尚志の作品を見たとき(たぶん7、8年前)、絵巻とアニメの時間表現を見事に止揚させてるなあと感心したものだ。だがもっと感心したのは、次に見たとき、部屋の壁を移りゆく光を捉えようとして作品がサイトスペシフィック化していたことだ。もちろん刻々と移り変わる光を捉えきることはできないので、そのつど決断しなければならず、そのいらだちと思いきりのよさが彼の表現主義的な図像に表われているように思えた。モネの連作における筆触と同じく、石田の即興的な筆触も時間によって決定づけられており、それゆえに根拠のない抽象画よりはるかに美しいのかもしれない。しかもとどまることを知らず、まだまだ展開し続けている。これは必見。
2015/03/27(金)(村田真)
試写『だれも知らない建築のはなし』
会期:2015/05
ユーロライブ試写室[東京都]
もう30年以上も前に開かれた国際会議に参加した建築家たちが、当時のことを振り返ったインタビュー映画。そんなもん建築に興味ないヤツにはおもしろくもなんともないが、少しでも興味あればこの30年の建築界の盛衰や裏話が聞けてけっこう楽しめる。ことの発端は、1982年にアメリカで開かれた「P3会議」に、磯崎新がふたりの若手建築家を伴って参加したこと。このふたりは後に世界的な建築家として脚光を浴びることになる安藤忠雄と伊東豊雄だが、当時まだ小住宅しか手がけたことがなかった。インタビューはこの3人に加え、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクス、レム・コールハースといったスター建築家のほか、日本から世界へ建築情報を発信した『a+u』『GA』などの編集者たち。インタビューは個々に行なわれたが、互いの話をつなげてまるで議論を交わしてるように構成されているため、立場の違いや建築観の違いが浮き彫りになっておもしろい。いちばん印象的だったのは、レム・コールハースが日本の建築家はしゃべらない(言葉を重視しない)と批判的に述べていること。理論家として知られる磯崎でさえ、日本の特殊事情を述べることであらかじめ批判を回避しているというのだ。これはもちろん建築に限った話ではないだろう。
2015/03/26(木)(村田真)
3331アートフェア2015
会期:2015/03/21~2015/03/29
3331アーツ千代田メインギャラリー[東京都]
アートフェアといえば、画廊が集まってそれぞれ扱い作家の作品を出展する形式だが、これは主催者側がアーティストを選んで出品してもらい、作品を売ることで作家を支援すると同時に「新しいコレクター像」も確立しようというシステム。出品は五木田智央、三沢厚彦、オル太ら名を知られてるアーティストも含めて86組で、アートフェアというよりグループ展、いや個展の集合に近いかもしれない。ちょっとほしいなと思ったのは、「道頓堀」「パチンコ」などネオンサインの部分だけをプリントした藤倉翼、透明アクリルでヤドカリのシェルターをつくるAKI INOMATA、日本の近代絵画に擬態した菊谷達史、人体の一部を彫刻にする今野健太、セルフヌード写真に洞窟壁画のイメージを刺繍した宮川ひかる、CDケースや段ボール箱をタブロー化した末永史尚らの作品。ほしくはないけど、壁に穴をあける小川真生樹の作品(@5万円)は売れたんだろうか、心配になる。余談だが、このアートフェアが毎年ずっと続いたら、そして3331がなくならなければ、1316年後には「3331アートフェア3331」になるだろう。そこまで続けてほしいなあ。
2015/03/26(木)(村田真)