artscapeレビュー
笹川治子 個展「ロボッツ」
2015年06月15日号
会期:2015/05/08~2015/05/24
ヨシミアーツ[大阪府]
全長6メートルの透明なビニール製の《うつろ戦士》を中心とする展示。このバカでかい人形、内部は空気だから中身は空っぽで、所在なさげに横たわってる。ここから二つのことが読み取れる。ひとつは、戦士は命令に従うだけで自分で勝手に考えたり行動したりできない「殺人ロボット」だから、文字どおり「うつろ」な存在でなければならなかったこと。図体はでかいけど中身は軽いデクノボウなのだ。もうひとつ、戦時中は軍も政治家も国民もだれひとりまともな判断ができず、みんな「空気」ばかり読んでいた。その「空気」のかたまりが戦士の姿を借りてること。これは戦前戦中の空気に近づく現代日本への痛烈な批評でもある。ほかに目に止まったのが、画面全体にモザイクのかかった映像作品。かなり粗いモザイクなのでなにが映ってるのかわからないけど、なんとなく爆発シーンのようだ。モザイクはある大きさを超えると細部がわからなくなり、ゴミも死体もエロもキノコ雲も四角い色彩の羅列となって、美しいオプティカル・アートと化す。これは使えそう。
2015/05/08(金)(村田真)