artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
建畠晢 退任記念展「ポエトリー/アート」
会期:2015/03/07~2015/05/10
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA 2[京都府]
京都芸大学長を務めた建畠さんの退任記念展。ついでだから見てやるか。画家の小島千雪との詩画のコラボレーション、建畠自身による映像と彫刻、手を載せてみると温かさが伝わってくる詩集『温度詩』など、詩人でもあり美術評論家でもある建畠さんらしい作品が並ぶ。彫刻は白い台座に白い棒を1本、2本、3本と立てたものが計6点あって、なにか近代彫刻の原点を見るような思いがする。そういえば彼は父も兄も彫刻家だったっけ。「こうした試みがすべて“詩”という言葉で語られるような視野があってほしい」と建畠は記している。ならばタイトルは「ポエトリー>アート」か?
2015/05/08(金)(村田真)
日本博覧会の黎明
会期:2015/03/14~2015/05/10
尼崎市立文化財収蔵庫[兵庫県]
ちょっと興味があったので足を伸ばしてみた。尼崎市立文化財収蔵庫は女学校として建てられた建物を転用したもので、会場は少し大きめの教室だったスペースを使っている(でも展示空間としては小さめ)。黎明期の博覧会といえば明治5(1872)年の湯島聖堂での博覧会を思い出すが、これは初の政府主催による博覧会であって、その前年に京都博覧会が開かれていた。同展では湯島の博覧会とともに、京都博覧会と第1回内国勧業博覧会にもスペースを割いているが、これは京都博の資料や勧業博の写真帖をこの収蔵庫が有しているからだ。ウィーン万博に出展するため高橋由一が富士山を描くという告示書(富士山を描くにも告示が必要だった?)とか、河鍋暁斎による湯島の博覧会内部や勧業博の外観とか、白黒でボケてるけど記録としては浮世絵より正確な勧業博の写真とか、興味深い資料がたくさん。
2015/05/08(金)(村田真)
スティル・ムーヴィング
会期:2015/03/07~2015/05/10
元崇仁小学校[京都府]
京都駅近くの崇仁地域といえば「パラソフィア」の内覧会で見たヘフナー/ザックスの作品があったところで、ちょっと妙な雰囲気の漂う場所だが、この一帯に京都芸大が移転する計画が進んでるらしい。その地域の小学校跡で行なわれた展示。石原友明崇仁ゼミがおもしろい。レオナルド・ダ・ヴィンチが使っていたといわれるデッサン箱(カメラ・オブスクーラみたいなものか?)を復元し、崇仁地域を写生して渡り廊下に並べているのだ。デッサン箱も別の教室に展示していたが、図画工作室だろうか、額縁入りの複製画がたくさん並んでいて、それだけでもインスタレーションとして成立しそう。ところで、校内には卒業生による共同制作などが残されているのだが、なぜかモザイク作品が多い。そうか、モザイクは無数の画素から成り立つので、大勢の人たちがつくりあげていく作業に向いているんだと気づく。展覧会とはぜんぜん関係ないけどひとつ発見した気分。
2015/05/08(金)(村田真)
ディズニー美術
会期:2015/04/28~2015/05/10
クンストアルツト[京都府]
著作権にうるさいディズニー社に挑戦するかのような、ミッキーや白雪姫などのディズニーキャラクターをモチーフにした作品を紹介する意欲的な企画展。出品は入江早耶、岡本光博、ピルビ・タカラ、高須健市、福田美蘭の5人で、作田知樹も文章で参加。圧巻は福田の《誰が袖図》。着物を掛けた衣桁を描く近世の「誰が袖図屏風」の形式を借りて、見覚えのある色とりどりのドレスや帽子や靴を描いたもので、キャラクターを登場させずに小道具だけで示唆するという高度なテクニック。のみならず、画面左下には殺伐たる砂漠の風景をあしらった屏風が描かれているが、これはふたりの日本人が殺害されたというシリア砂漠というから、およそディズニーワールドとは対極の世界観をぶつけているわけだ。これは力作。入江は『白雪姫』『眠れる森の美女』『ピーターパン』の3冊の絵本を消しゴムでこすり、出たカスを色分けしてそれぞれ白雪姫と意地悪な女王、王子さまとドラゴンに姿を変えたマレフィセント、ピーターとフック船長を合体させた3体の小さなフィギュアをつくり、こすりとられた絵本の前に置いた。その超絶技巧もさることながら、ディズニー特有の善悪二元論を茶化すような批評精神が秀逸だ。一方、みずから体を張ってディズニー社に挑んだのはピルビ・タカラ。彼女自身が白雪姫に扮してパリのディズニーランドに入ろうとしたら止められ、着替えるように指図されたというビデオを公開している。しかもまだ会場の外なのに。これは人権侵害ともいえ、明らかにディズニー社にとってマイナスイメージだ。そのほか、ネズミのシルエットを天地逆にしたようなマークを商標登録した高須、バッタもんのネズミ人形を集めてガマグチをつくった岡本など、きわめて真摯で充実した展示になっている。しかしじつのところこの展覧会、ディズニー社への挑戦というより、著作権に萎縮したり自主規制に走りがちなアーティストやメディアの姿勢を問うのが目的といえるだろう。
2015/05/08(金)(村田真)
スティル・ムーヴィング@KCUA
会期:2015/03/07~2015/05/10
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
京都・大阪へ日帰りギャラリーツアー。まずは京都芸大のギャラリーでやってる「スティル・ムーヴィング」へ。ここでは金氏徹平、唐仁原希、清田泰寛、青木陵子+伊藤存ら内外で活躍する10組が約5メートルずつ壁面を使っている。木彫のケンタウロス像の首から上だけを彫り削った金氏の《見えない場所の神話(ケンタウロス)》、複雑な形態の骨組みにテントを張るようにキャンバスを張って、表面に抽象的パターンを施した清田の大作3点、自分のテリトリーだけ壁を赤く塗り、腰板をつけ、額縁をつけた絵画を飾って個展会場に仕立てた唐仁原に注目。
2015/05/08(金)(村田真)