artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
鎌倉からはじまった。1951-2016「PART1: 1985-2016 近代美術館のこれから」
会期:2015/04/11~2015/06/21
神奈川県立近代美術館 鎌倉[神奈川県]
今年度いっぱいで閉館する「鎌近」最後の企画展。1951年の開館以来60年を超す展覧会活動を、現在から過去に向かって3回に分けて振り返っている。パート1では、85年から現在まで30年間に開かれた展覧会のなかから、斎藤義重、井上長三郎、山下菊二、田淵安一、山口勝弘、宮脇愛子、李禹煥、河口龍夫、畠山直哉、内藤礼ら約70作家の作品を展示。あれ? 85年以降といいながら、最後の3、4人を除けばそれ以前の古い作家ばかりじゃないかと思うのだが、あくまでこの30年間に展示された作品というだけで、制作年も作家の活躍した時代も大半はそれ以前のもの。だから必ずしも時代を反映した展示になってるわけではないのだ。展示全体を通して感じたのは、どこかしら文学性(文学臭も含めて)を漂わせる作品が多いこと。基本的にひとり1点の出品なのに、なぜか詩人の西脇順三郎だけが3点(飯田善國との詩画集を合わせれば4点)も出品しているせいもあるかもしれないが、そうじゃなくても、例えば田淵安一はあるけど桑山忠明はないとか、李禹煥はあるけど高松次郎はないとか、河口龍夫はあるけど菅木志雄はないとか、また関西の作家がごっそり抜けてるとか、なんとなく趣味の偏りがうかがえる。つまり鎌近は文学好きというか、文学好きな美術が好きなのだ。ところで坂倉準三設計の美術館は、近代建築の記録と保存を目的とする国際組織DOCOMOMO(最初NTTドコモが出資してるのかと思ってた)の「日本近代建築20選」に選ばれたこともあるモダニズムの名建築。それだけに来年、敷地を所有する鶴岡八幡宮に返還される前に取り壊されるんじゃないかと心配していたが、現在は県と八幡宮のあいだで保存を前提に調整が進んでるらしい。でもどうせ残すならただ保存するだけでなく、文化的に活用してほしいものだ(八幡宮の宝物殿は似合わないけどね)。
2015/05/01(金)(村田真)
資本空間 Vol.1 豊嶋康子
会期:2015/04/11~2015/05/16
ギャラリーαM[東京都]
壁や柱にパネルが20数点、ちょっと角度をもたせて掛けてある。タイム&スタイルで見たのと同じで、表面はまっさらなベニヤ板だが、裏面をのぞくと角材が縦横斜めに組まれている。この組み方になにか意味があるのか、あるいはだれかのパロディなのかと考えてしまったが、とくになにもないみたい。情報量でいえばフラットな表より複雑に入り組んだ裏のほうがはるかに多いので、表より裏側をしげしげとのぞき見ることになり、ほんの少し後ろめたさを感じたりもする。もう、いけずな作品。
2015/04/28(火)(村田真)
鳥獣戯画──京都 高山寺の至宝
会期:2015/04/28~2015/06/07
東京国立博物館 平成館[東京都]
待望の「鳥獣戯画展」だが、前半は絵巻を所有する高山寺のコレクションや明恵上人にまつわる作品を延々と紹介。後半いよいよ鳥獣戯画の登場かと思いきや、まずは《華厳宗祖師絵伝》から。いやこれも国宝だけあってなかなか見ごたえのある絵巻だ。新羅の義湘と元暁は仏法を学ぶため唐に向かい、長安で義湘は善妙という娘に一目惚れされる。義湘の帰国を知った善妙は海に身を投げて龍に変身、義湘を乗せた船を荒波から守るという、ちょっとうれしいような迷惑なようなストーカーまがいのストーリーだが、見どころはなんといっても荒波のなか稲妻を放ちながら進む龍の姿。この「義湘絵」は前期のみで、後期は「元暁絵」の出品という。で、いよいよ《鳥獣戯画》のご開陳だが、よく知られてるようにこの絵巻は甲乙丙丁の4巻からなり、いちばん有名なウサギやカエルが遊んでる図は最初の甲巻。ところが展示は逆に丁から始まり甲が最後になっている。「鳥獣戯画展」なのに、われわれが知ってる絵は最後の最後まで行かないと見られないのだ。しかも最後の部屋は行列用のスペースまでたっぷりとってあって、どれだけ入れるつもりやねん。たぶん鳥獣戯画を見に行ったのに行列に耐えきれず、ウサギもカエルも見ないで帰ったという子が続出するに違いない。そのため展示ケースの上に部分図を拡大コピーして提示しているが、これ見てホンモノを見た気になる子は多いだろう。ちなみに絵巻きは各巻とも前期は前半のみ見せ、後半はコピーを展示しているが、修復したばかりのせいか、ホンモノもコピーみたいに見える。
2015/04/27(月)(村田真)
飯川雄大「ハイライトシーン」
会期:2015/04/03~2015/04/26
高架下スタジオ・サイトAギャラリー[神奈川県]
仮設壁に何台かモニターを埋め込み、サッカーのゴールキーパーの映像を流している。腹ボテボテのおやじやくわえタバコでボールを処理する兄ちゃんなど、ほとんど草サッカーのゆるいレベルで、ユーチューブでしばしば見られるようなスーパーセーブや珍プレーを期待したら大間違い、ずっと見ててもなにも起こらない。つまらないといえばこれほどつまらないものはない。昨年ベルリンに滞在したときに制作した作品。
2015/04/26(日)(村田真)
六本木アートナイト2015
会期:2015/04/25~2015/04/26
夜11時ごろから2時間ほど徘徊してみた。ヒルズの毛利庭園に置かれたチームラボの《願いのクリスタル花火》は、円筒形に吊るしたクリスタルに観客がスマホから選んだ打上げ花火を投影できるというもの。これは華やかだけど、金がかかってそう。街なかのビルの一室でやっていた曽根光揮の《写場》には頭をひねった。スクリーン上にカメラおやじが登場し、スクリーン前の椅子に座った観客を撮影するという参加型の映像インスタレーションだが、1分もたたないうちにいま写した写真がプリントされてスクリーン上に一瞬だけ映し出される。どういう仕掛けか、スクリーンと現実が交錯するのだ。さてそんなインタラクティヴなメディアアートが大勢を占めるなか、ひとり反旗を翻すかのようにアナクロ・アナログ路線を突っ走ったのが中崎透の《サイン・フォー・パブリックアート》。六本木の各所に置かれたパブリックアートをダサいスナックの看板みたいに仕立てた秀作。これはおもしろい。でも元作品を知らなければ理解不能だけど。ともあれ夜通し人騒がせなアートイベントであった。
2015/04/25(土)(村田真)