artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

福士朋子「The Lucky☆Lucky Show」

会期:2015/02/11~2015/03/29

ナディッフウィンドーギャラリー[東京都]

『元祖FAXマンガ お絵描き少女☆ラッキーちゃん』の出版記念展。福士はもともと線描による抽象画を描いていたが、20年ほど前からファクスでマンガ「ラッキー☆ラッキー」を送りつけるようになり、やがてマンガもタブローとして制作、抽象画と並行して発表していた。最近はマンガの人気が高まったせいか、すっかり抽象画のほうは見かけなくなった(まだ描いてたらゴメン)。今回はホワイトボードにマジックインキで描いた美術ネタのマンガ5点の展示。内容はともかく、このホワイトボードという支持体はテンポラリーなタブローの素材として使い勝手がありそうだ。

2015/03/21(土)(村田真)

頭上ビックバン! 帽子おじさん 宮間英次郎 80歳記念大展覧会

会期:2015/03/21~2015/04/24

ナディッフギャラリー[東京都]

街で拾った電灯の笠やビニール人形、ぬいぐるみなどを積み重ねた巨大な帽子を被って出没する「帽子おじさん」こと、宮間英次郎の個展。キュレーションは畸人研究学会+都築響一で、会場には10点ほどの実物の帽子や写真パネル、メモなどがところ狭しと並んでいる。なにか創作したというより、ガラクタが勝手にくっついてきたといったほうが正しいような物件だ。これがアートかどうかはともかく、ヘタなアートよりインパクトがあるのはたしかだろう。ぼくが行ったときはちょうど宮間氏とキュレーターによるトークイベントの最中で、アーティストのトークにはない盛り上がりを見せていた。こういうアートのことなど考えない輩にアーティストは絶対かなわない。

2015/03/21(土)(村田真)

第9回シセイドウアートエッグ「狩野哲郎 展──Nature/Ideals」

会期:2015/03/06~2015/03/29

資生堂ギャラリー[東京都]

階段を下りて行く入口に網が張ってあり、ギャラリー内に鳥が放し飼いにされているとの注意書きがある。会場には木の枝や石などの自然物、リンゴやオレンジなどの果物類、スーパーボールや食器などの工業製品が一見ランダムに置かれている。自然と人工、具象と抽象、有機と無機が混在した状態だが、よく見ると、アームつきの監視カメラの横に似たようなかたちの木の枝を取りつけていたりして、デタラメに配置されてるのではないことがわかる。これはひょっとして、人間の脳内を外在化させたインスタレーション? だとすれば、この空間(脳内)を自由に飛び回り、必要なものを探し出す鳥は「私」かもしれない。そういう私は「かごの鳥」みたいな。

2015/03/21(土)(村田真)

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アートフェア東京2015

会期:2015/03/20~2015/03/22

東京国際フォーラム[東京都]

リーマンショックの影響で活気を失ってから見る気がなくなっていたが、久しぶりに訪れてみると予想以上に混んでるし、それなりに活気もある。後の発表によると観客動員は過去最高の55,000人という。会場は大きく南北に分かれ、北ウィングは古美術、工芸、日本画など、南ウィングは現代美術系が中心だが、現代美術系も絵画や彫刻などわかりやすい単体作品が多く、その違いは曖昧だ。また企画展示として日本の美術を紹介する「アーティスティック・プラクティス」を2011年から開催しており、今回は「琳派」と「ヴェネツィア・ビエンナーレ」の2本立て。このヴェネツィアの第2部(もの派特集)をはじめ、いくつかの画廊で菅木志雄のインスタレーションが見られたが、つい数年前までもの派の作品がアートフェアで高額で取り引きされるなどだれが想像しただろう。また、具体の白髪一雄や元永定正らの小品にも数百万円の値がつけられていて、異人さんに連れられて行っちゃったらどうすんだと心配になる。

2015/03/21(土)(村田真)

竹内公太「Re:手の目」

会期:2015/03/07~2015/03/22

スノーコンテンポラリー[東京都]

タイトルの「手の目」とは手のひらに目玉がある妖怪のことだが、ここでは「触覚的な視線」がテーマになっている。作品は大きく分けてふたつ。ひとつは、いわき市にある石碑の文字をひとつずつ撮影して「我たシは石碑で無イケレど」と映し出す《ブックマーク》。最後の「ケレど」は後に付け加えたそうだ。もうひとつの《手の目》は、3.11の被災地の海岸や鉄道跡や神社などを描いた絵の前に、その絵に手を伸ばすかのようにシリコンで型どった手を設置した作品。手のひらにはライトが仕込まれ、絵を照らし出すと同時に指の影をキャンバスに落としている。風景は、ただ見るより写真に撮ったほうが記憶に残り、写真より絵に描いたほうがさらに記憶に刻まれるが、それでも足りず、もっとフィジカルな記憶がほしいのか。

2015/03/20(金)(村田真)