artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
ワンダーシード2015
会期:2015/02/21~2015/03/22
トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]
公募で選ばれた約100人の若手作家による8号以下の小品の展示即売会。ちょっとしたアートバブルの7~8年前は完売していたが、今年は会期終了間際で売れてるのは6割くらい。値段もだいたい3万円以下と手ごろなのに、今回は買いたいと思う作品が1点もない。全体に質が低下してるのか、ぼくの目が肥えたのか(まさか)。たぶん金がないから購買欲が減退してるせいでしょうね。
2015/03/20(金)(村田真)
ボッティチェリとルネサンス──フィレンツェの富と美
会期:2015/03/21~2015/06/28
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
昨秋、都美でボッティチェリを目玉とする「ウフィツィ美術館展」をやったばかりなのに、またかよ的なダメ押し展。今回の目玉はやはりウフィツィ美術館所蔵のボッティチェリの《受胎告知》だが、これが幅5メートルを超すフレスコ画の大作、つまり壁からはがしたものなのだ。ボッティチェリはこれを描いていたときに、まさか壁から引っぺがされて美術館に展示されるなんて考えられなかっただろうし、よもや500余年後に日本で公開されるなど想像すらできなかったに違いない。本題に戻ろう。同展のテーマは「フィレンツェの富と美」で、英語では「マネー・アンド・ビューティー」と露骨。15世紀にフィレンツェを牛耳ったメディチ家が金儲けの罪滅ぼしとして芸術を支援した、いわゆるメセナの対象としてボッティチェリを取り上げているのだ。金がなくても美は生まれるが、金を注げばさらに美は栄えるというのも事実。展覧会の序盤ではフィレンツェで流通していたフィオリーノ金貨をはじめ、銀行業務を描いた版画、メディチ銀行の為替手形、高利貸しの絵などマネー関係の資料も出ている。メインの作品は10点を超すボッティチェリのほか、フラ・アンジェリコの小品やロッビア一族の彩釉テラコッタなども出ているが、時代が時代だけに工房作や無名画家の作品も多く、主題も日本人になじみの薄い宗教画ばっかり。ただ額縁と一体化した板絵が多く、当時の建築的ともいえる絵画形式がよくわかって勉強になる。
2015/03/20(金)(村田真)
パラソフィア:京都国際現代芸術祭2015
会期:2015/03/07~2015/05/10
鴨川デルタ[京都府]
先々週の内覧会のとき、最後にスーザン・フィリップスのサウンド・インスタレーションの場所に駆けつけたのに、終了時間の午後6時を回っていたせいか終わっていたガーン。今日はリベンジで、再び賀茂川と高野川の合流点の鴨川デルタと呼ばれる三角地帯にやってきた。この三角地帯を囲む3本の橋の下にスピーカーが設置されているのだが、しばらく待っても雑音以外なにも聞こえてこない。まさか、と思って案内板をよく見たら、30分に1回、2分43秒と記されていた。とりあえず4分33秒でなくてよかった。5時ぴったり、ひとつのスピーカーから清廉な歌声が聞こえてくる。追いかけるように残りふたつからも歌声がかぶさり、美しいカノンに。バスや雑踏、川の音も混じってイイ感じ……と思ったらおしまい。あっという間の作品でした。
2015/03/18(水)(村田真)
國府ノート2015
会期:2015/03/17~2015/03/29
アートスペース虹[京都府]
滋賀から山科に出て地下鉄で蹴上へ。昨年4月、国際芸術センター青森で個展中に事故死した國府理の資料展が開かれているというので見に行く。國府は自動車を使った作品で知られる関西のアーティストで、青森の個展では密閉空間に自動車を置き、エンジンをかけたまま作業していて倒れたらしい。ギャラリーの壁にはプロペラつきの自転車が飾られ、テーブルには厖大なメモやドローイングが置いてあり、自由に見られるようになっている。自分でいうのもなんだが、故人とは面識もないのになんで見に来たんだろう。たぶん彼が作品制作中に作品のなかで亡くなったからだ。
2015/03/18(水)(村田真)
曽我蕭白「富士三保図屏風」と日本美術の愉悦
会期:2015/03/14~2015/06/07
ミホミュージアム[滋賀県]
こちらはいかにもミホミュージアムらしいコレクション展。蕭白の《富士三保図屏風》を中心に、光琳、仙 、応挙らの水墨画、陶器、埴輪、神像などが並んでいる。ずいぶん金をかけた余裕の展示だ。なかでも圧巻が初公開の《富士三保図屏風》。六曲一双の左隻に裾野がギューンとタコの足のように延びた富士山が描かれ、右隻には海をまたいで虹がかかっている。どこからどう見りゃこのように見えるんだろう。まさに「奇想」の画家。それにしても、ミホで三保とは。
2015/03/18(水)(村田真)