artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
光の都市|光州
会期:2014/11/16~2014/12/04
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
今年、東アジア文化都市に横浜、泉州(中国)とともに選ばれた韓国・光州の市立美術館が主催する展覧会。同館学芸員のビョン・ギリョン氏によれば、光州市はビエンナーレに代表されるように、文化が都市を再生させ、市民生活を豊かにできるという信念を持ってる街だという。日本に本気でこんな信念を持ってる自治体があるだろうか。たとえあっても首長が変われば続かないし。出品は5人でいずれもレベルが高いが、とりわけ目を引いたのは李二南の映像インスタレーション。フェルメールの《牛乳を注ぐ女性》の牛乳の白い筋が下に置いたモニターに続いていたり、画面に映る《モナ・リザ》が小さな戦闘機に爆撃されて次第に花に変わっていったり、日本好きだったゴッホの自画像が広重の《東海道五十三次》のなかをさまよったり。だれもが知ってる名画を用いて美術史の森に分け入っている。アイディアは珍しいものではないけれど、技術的にもよくできた作品だ。
2014/11/17(月)(村田真)
記憶のイメージ/イメージの記憶
会期:2014/11/15~2014/11/30
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
吉野石膏美術振興財団が助成してきたアーティストたちの選抜展。石膏を原料とする住宅建材で知られる吉野石膏が財団を設立したのは2008年のこと。以来、おもに若手アーティストの海外研修への助成をしてきた。出品は秋吉風人、岩田草平、竹村京、橋爪彩、水越香重子ら17人で、絵画あり彫刻ありインスタレーションあり映像ありと多彩だ。石膏会社だから石膏を使うアーティストしか支援しないといった狭量さがないのはありがたいことだが、反面これだけ守備範囲が広いと財団のイメージがボケてしまいかねない。もう少し対象を絞ったほうが財団の性格がより明確化するんじゃないかと思ったりもする。
2014/11/17(月)(村田真)
阪本トクロウ「周縁」
会期:2014/10/31~2014/11/23
アートフロントギャラリー[東京都]
青い空に白い雲、波紋が揺らぐ水面、部屋の片隅、白い壁、地面と水面が入り組んだ地図など、ふつう絵の脇役である背景だけを描いた絵。というと主役を消したトリックアートみたいだが、主役がいなくなったのではなく、背景を主役にしたのだ。いわば地から図を除くのではなく、地が図になった状態。これはおもしろい。日本画出身、おもに高知麻紙にアクリルで描いている。
2014/11/16(日)(村田真)
コスミック・ガールズ
会期:2014/11/27~2014/11/16
丸の内ハウス[東京都]
荒神明香、小林エリカ、スプツニ子!、力石咲の4人による「宇宙少女展」。まず出会うのは、大小の円形アクリルレンズを吊り下げた荒神の《コンタクトレンズ》。扁平なのに球体が浮いてるように見えて、そこだけ時空の変容を感じさせる。小林の《半減期カレンダー》は、ラジウム226の半減期である1600年のカレンダーをA1サイズの紙に印刷したもの。全部で1600枚刷り、お持ち帰り自由だ。スプツニ子!の《ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩》は、月面に女性の足跡を印すマシンをつくるというプロジェクト。実際にNASAなどの協力を得てつくっちゃうのはさすがだが、それをPVで見せられてもなあ。力石の《ニットインべーダー》は、会場の数カ所に置かれた椅子やテーブルに緑色のニットカバーを被せたもの。こういうの好きだけど、似たようなこと海外で街路樹やパーキングメータにやってる人いるよね。
2014/11/14(金)(村田真)
ウィレム・デ・クーニング展
会期:2014/12/08~2015/01/12
ブリヂストン美術館[東京都]
近代美術のイメージが強いブリヂストン美術館でウィレム・デ・クーニングというのも意外な気がするが、数年前にはザオ・ウー・キーの回顧展もやったし、ポロック、デュビュッフェ、スーラージュら抽象表現主義やアンフォルメルの画家たちの作品もコレクションしてる(今回も常設展に出ている)から、想定外というわけではなさそうだ。といっても今回のデ・クーニングは館蔵品ではなく、ジョン・アンド・キミコ・パワーズ・コレクション(リョービ財団に寄贈)から借りてきたもの。パワーズ・コレクションといえば昨年「アメリカン・ポップ・アート展」で紹介されたが、版画や素描が多くてがっかりした覚えがある。今回の出品は油彩と素描を中心とする女性像35点。比較的初期の1951年のものが2点あるが、あとの大半は60年代後半の制作で、なかでも65-66年の作品だけで20点を超す。初期の2点がいちばん緊張感があるように思うけど、そうじゃなくても特定の時期の同じテーマの作品を集中的に見られるのは貴重な機会だ。とくにこのころはポップアートが全盛を迎える時期なので、そんな背景を考えながら見るのもおもしろい。大規模な特別展ではないけれど、中規模のテーマ展としては満足。
2014/11/14(金)(村田真)