artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ヴィック・ムニーズ“SMALL”

会期:2014/11/24~2014/11/29

nca[東京都]

すぐに消えてしまう液体や粉で絵を描いたり、ゴミを集積して人物画をつくったりしてきたヴィック・ムニーズ。新作ではミクロの世界に挑んでいる。1粒の砂の表面に城を描いた「サンドキャッスル」シリーズと、培養シャーレ内の細胞を幾何学パターンに配列した「コロニーズ」シリーズで、もちろん肉眼では見えないので、MITの協力を得てナノテクで制作・撮影したもの。砂上の楼閣ならぬ砂中の楼閣。そこまでやるか。以前の液体の作品にしろゴミの作品にしろ、実物ではなく写真でしか見られないし、残せない。てことは、彼の作品はすべて「証拠写真」ということだ。

2014/11/14(金)(村田真)

4人の絵画

会期:2014/11/14~2014/11/20

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

日本橋から徐々に銀座寄りに移転しているツァイト・フォト・サロンのリニューアルオープン第2弾は、辰野登恵子、樋口佳絵、いとうまり、長沢郁美の女性画家4人展。フォト・サロンだからフォトリアリズムとかフォトコラージュを使った絵かと思いきや、写真とはほとんどなんの縁もない純粋絵画ばかり。この画廊は80年代から写真だけでなく、なぜか19世紀フランスのアカデミズム絵画も扱っていた(オーナーの石原さんによると古いレコードも扱ったという)。忘れられていたアカデミズム絵画が再評価されるのは、オルセー美術館の開館(1986)以後のことだから、先見の明あり。懐の深いギャラリーだ。4人の絵画のほうは、やはり辰野の骨太さが圧倒的。

2014/11/14(金)(村田真)

ザ・ミラー

会期:2014/10/16~2014/11/09

銀座4丁目ザ・ミラー館(名古屋商工会館)[東京都]

銀座4丁目の裏通りを歩いていたら客引きに呼び止められた。よく見ると、清水敏男アートオフィスの古参スタッフ。ああ、そういえば目の前のビル全体を使った展覧会を清水さんが企画したんだと思い出した。予約制だったからつい行きそびれてしまったが、会期を延長してまだやってる(11/14(金)15(土)16(日)の3日間は特別開館)というので見せてもらうことに。会場となったビルは1930年に竣工した名古屋商工会館で、築80年を越すこのビルも残念ながら建て替えられることになり、ファイナルショーとして全館を使った展覧会が企画されたのだ。ほぼ正方形のビルの中央にあるエレベータを囲むように配置された20室ほどの空間に、約30組のアーティストが作品を展示している。部屋を半周する長い紙に水平線を彩色したフランシス真悟、黒い部屋を白い線で装飾して「鏡の間」に変えたニコラ・ビュフ、木の椅子を天井から円環状に下げて「天上(天井)の会議」に見立てた土屋公雄、真っ暗な部屋をしつらえて目が慣れるまで待つと光が浮かんでくる堂本右美など。不可解なのは5階の展示で、壁にはタンカと呼ばれるチベットの仏教画、大正時代の若い画家の自画像、一筆書きのような李禹煥の絵画が掛けられ、床にはアニッシュ・カプーアの鏡面物体が置かれている。どういうつながりがあるのか、謎解きみたい。6階は西野達の写真の展示で、ちょっとがっかり。いや西野の写真は抜群におもしろいんだけど、どうせ取り壊すビルなんだから壁でも床でも天井でも突き破ってほしかったなあ。

2014/11/14(金)(村田真)

原萬千子 個展

会期:2014/11/13~2014/11/24

高架下スタジオ・サイトAギャラリー[神奈川県]

1934年横浜生まれ、戦後小倉遊亀に師事し、傘寿を迎えたいまでも季節の花々を描き続けている日本画家。そんな閨秀画家がなんで黄金町くんだりで個展を? いくら横浜生まれといっても高架下のギャラリーは似合わないだろう、と思ったら「黄金町バザール2014」のキュレーターを務めた原万希子さんのご母堂だという。なんか黄金町がイッキに浄化された感じ。

2014/11/13(木)(村田真)

TWSエマージング2014

会期:2014/11/01~2014/11/24

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

基山みゆき、宮岡俊夫、佐々木成美の3人の個展。3人とも絵画だが、それぞれ持ち味が違っておもしろい。基山は「生命」をテーマに動植物らしきものを描いてる。薄く溶いた絵具でもやっと仕上げて、どこかユーモラスだ。宮岡はプールやテニスコートらしき風景をざっくり描いている。タイトルも《Landscape -pool-》だったりするが、水面も植物も一様な色面で構成し、一部を余白にしたり天地逆にして制作したり(絵具の滴りが上に流れている)して、「風景」ではなく「絵」をつくろうとしてることがわかる。佐々木は一見ピカソ風の線描を主体とした人物画が多いが、部分的に絵具をてんこ盛りにして見る者の視線を惑わせる。うまいなあ。トサカをつけた陶器や描きながらコマ撮りした油絵アニメも出品。みんないい仕事してますねえ。

2014/11/11(火)(村田真)

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