artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

しりあがり寿「絵画の存在とその展開について」

会期:2015/01/08~2015/02/13

art space kimura ASK?[東京都]

作者名とタイトルが結びつきにくいが、実際に見るとわからないでもない展覧会。同じような花瓶の絵が壁に11点、床に6点、いずれも額縁つきで展示されている。異常なのは、これらの作品がすべて回転していること。絵を動かすのは人類が長いあいだ夢見てきたことだが、いまどきだれでも動画を撮れるようになったし、いっそ画面そのものを動かしてみたってか。地下のギャラリーでも壁に1点、スポットライトを浴びて回ってる。タイトルの「展開」は「回転」の間違いじゃないか。そういえば以前、しりあがり氏の弟が関わっていたアーティストのオーディションで、絵がガタガタ動く作品があったなあ。

2015/01/09(金)(村田真)

永井夏夕 展

会期:2015/01/09~2015/01/31

ギャラリーなつか[東京都]

空を大きくとったロマン主義を思わせる風景画。ちょっとイラストっぽくも感じられるが、紙や薄めの布にアクリルで細密に描いてるので、日本画かテンペラ画のような肌合いがある。ちなみに東京藝大デザイン科描画装飾の出身という。ありそうでなさそうな絵だ。

2015/01/09(金)(村田真)

クインテットII──五つ星の作家たち

会期:2015/01/10~2015/02/15

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館[東京都]

富岡直子、平体文枝、岩尾恵都子、水村綾子、山本晶の中堅画家5人の展覧会。全員女性で、全員60年代後半に生まれ、全員80年代から90年代にかけて美大で学び、全員ホルベイン・スカラシップを得て、全員「VOCA展」に出品したことがある。つまり同じ時代を生き、同じ空気を吸ってきた画家たちなのだ。そのうえ今回は「風景」を共通テーマとしているのだから、作品が似るのは当然かもしれない。いや実際には似ているとはいえない。虹色の滑らかな画面をつくり出す富岡と、荒々しいストロークを見せる平体と、山に閉じた目をつける岩尾と、顕微鏡写真のような水村と、ハードエッジとペインタリーなタッチが共存する山本とでは、ぜんぜん違うといっていい。んが、印象としてはなんとなく似ている、というより共通する気分が感じられるのだ。それはたとえば、5人とも「なにを描きたいのか」「どのように描きたいのか」がはっきりしていて、描くことの喜びも伝わってくること、逆に「なぜ描くのか」「なぜ絵画なのか」「絵画とはなにか」といった根源的な問いに対する答えは期待できない、いや期待してはいけないような空気が漂ってること、に求められるかもしれない。よくいえば教条主義的でないこと、悪くいえば……別に悪くいう必要はないか。

2015/01/09(金)(村田真)

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野口明美 銅版画展「メトロに見るパリのエスプリ」

会期:2014/12/23~2015/01/03

ギャルリーパリ[神奈川県]

正月を挟んだ年末年始だけの開催。パリのメトロにインスピレーションを得た銅版画で、案内状を見て興味を惹かれた。そこには広告のある地下鉄ホームを描いた作品が印刷されているのだが、全体は簡略な直線で表わされているのに、女性をモデルにした広告の部分だけ丹念に描き込まれていたからだ。この広告もひとつの絵と見れば、画中画を強調した作品といえる。フランス在住40年近い野口さんは、最初は壁画を志していたらしいが、パリで銅版画を学び、メトロの駅を描くようになったという。地下鉄、壁画と聞いてラスコーの洞窟壁画を思い出したが、野口さんもフランスに来たころ興味があって見に行ったらしい。70年代にはまだ公開されていたのだ。先史時代の洞窟壁画と現代のメトロの広告をつなぐ見えない糸があるのかもしれない。それはともかく、この「メトロシリーズ」、街の広告を描くという意味では、かつて佐伯祐三が捉えたパリの街角のイメージとも通じるところがある。ほかに、彼がコレクションしたスプーンを正面から緻密に描いた版画も展示。正面性も大きな特徴だ。

2015/01/03(土)(村田真)

森淳一「tetany」

会期:2014/12/03~2015/01/10

ミヅマアートギャラリー[東京都]

少女像が3体。1体は大きく両手を掲げた立像で、1体は両手両膝を床につき、はいつくばって顔を横に向けている姿。奥の部屋のもう1体は上半身のみの小像で、ノースリーブの服に色彩が施されている。いずれも木彫で、眼球は白い大理石?が嵌められてるが、黒目はないので不気味な印象を与える。これはいったいなんだろう? ほかに絵画が2点、いずれも正方形の画面にほぼモノクロームで50-60年代のアメ車が描かれていて、はぐらかされる。解説によれば「ある画家が描いた少女、60年代アメリカを舞台にしたテレビドラマの登場人物、哲学者の言葉、本の中に出てきた写真など」さまざまなイメージや情報を昇華したものだそうだ。しかしこの少女、どっかで見たことあるなあと思ったら、リンダ・ブレア演じる「エクソシスト」の少女ではないか。

2014/12/26(金)(村田真)