artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

池田光宏「Blue Moment」

会期:2014/11/21~2014/12/14

トラウマリス[東京都]

家のかたちや抽象形態など、さまざまな図像の部分に蛍光カラーを塗った絵が壁に何枚か貼ってある。上から照明を当てているのだが、見ているうちに少しずつ色が変わっていく。照明の色によって蛍光カラーの色が微妙に変化していくようだ。だけでなく、色が強くなったり弱くなったり、まるで呼吸しているようにも見えてくるのだ。どこかで拡大して発表するのかしら。

2014/12/12(金)(村田真)

神蔵美子「たまきはる──父の死」

会期:2014/12/12~2015/01/25

NADiff Gallery[東京都]

『たまゆら』『たまもの』に続く神蔵美子の写真集『たまきはる』の出版記念展。「たま」シリーズ第3弾、というとミもフタもないが、「たまゆら」も「たまもの」も神に通じる高貴な概念であり、「たまきはる」も命にかかる枕詞だそうだ。恥ずかしながら知りませんでした。写真集のほうは、さまざまな人たちとの出会いと別れを聖書と照らし合わせながら綴ったもので、文章だけでも60ページにも及ぶという。展示では父との別れを中心に再構成しており、子どもの神蔵と写ったまだ若いお父さんの写真から、死の床、葬式、焼き場の風景、そして骨になって拾われるお父さんの残骸まで、花や空の写真を挟みながら淡々と並べられている。

2014/12/12(金)(村田真)

誰が袖図──描かれたきもの

会期:2014/11/13~2014/12/23

根津美術館[東京都]

だれの袖なの? という意味の「たがそで」図屏風には妙に惹かれるものがある。理由のひとつは、衣桁に掛けられた着物の柄が前面に出て屏風自体の意匠になると同時に、それが画中画の役割も果たしていること。もうひとつは、人物画でも風景画でもなく強いていえば風俗画なのだが、女性が着ていた衣服だけに残り香が漂ってるように感じられることだ。今回展示されているのは3件で、2件は人物が登場しないが、1件には珍しく遊女らしき女性が描かれている。こういう風俗画に描かれた女性がたいてい遊女であることも興味深い。浮世絵の美人画でもモデルは遊女が多いし、「誰が袖図」と同じ17世紀のオランダ風俗画に描かれる女性もだいたい遊女だ。ほとんど「フーゾク画」と称してもいいくらい。しかし袖と遊女といえば、やっぱりイングランド民謡「グリーンスリーヴス」だ。美しい旋律の歌だが、なぜ「緑の袖」かといえば、貧しい娼婦が青姦によって袖が緑に染まったからだという。話がそれたが、「誰が袖屏風」にはそんな美醜・清濁を合わせ飲む深さがある。

2014/12/12(金)(村田真)

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実験──ことばを展開させてみる

会期:2014/12/09~2014/12/20

東京都美術館ギャラリーB[東京都]

ふだんはスルーしてしまう書の展示だが、ワケあって入ってみた。映像ありレリーフありインスタレーションあり迷宮あり、タイトルどおり「言葉を展開させてみる」「実験」。

2014/12/09(火)(村田真)

私たちの窓から見える風景──現代美術作家の視点からひもとく、イメージ共有のあり方

会期:2014/12/09~2014/12/20

東京都美術館ギャラリーA[東京都]

タイトルの長い展覧会はコンセプトが明確ではない、という法則がある。ぼくが勝手につくった法則だが、だいたい当てはまる。この展覧会も例外ではなく、どういうグループなのか、なにを目指しているのかよくわからない。でもおもしろい作品がいくつかあった。ひとつは、サッカーボールの軌跡を立体的に彫ったり、水泳選手が水に飛び込んでしぶきを上げた瞬間を捉えた稲葉朗のマンガチックな木彫。もうひとつは、だれの作品か忘れたが、直径10メートル近い黒いビニール袋に空気を送ってドーム状に膨らませ、中に入れるようにした作品。これをゴミ袋に見立てると、内部からうっすら外の世界が透けて見え、自分がゴミになった気分が味わえる。会場が吹き抜けの巨大空間なので、これくらい量塊感がないと太刀打ちできないのかもしれない。

2014/12/09(火)(村田真)