artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
何翔宇「信仰錯誤」
会期:2013/10/04~2013/11/09
SCAI ザ・バスハウス[東京都]
北京を拠点とする何翔宇(ヘ・シャンユ)の日本で初の個展。正面の壁には背丈ほどの高さのピンク色のドアが設置され、把手が電球になっている。アイ・ウェイウェイもそうだが、北京のアーティストはデュシャンの影響が強いようだ。ガラスケースのなかには1メートルほどのシリコン製のセルフ彫刻が横たわり、赤い布がかけられている。これはロン・ミュエクそっくり。壁掛けの五つのビデオモニターは画面が真っ暗なので故障中かと思ったら、宙を舞うホコリを撮った映像だった。これはつまらないけどおもしろい。いや、おもしろいくらいにつまらない。
2013/11/08(金)(村田真)
不可解のリテラシー
会期:2013/11/08~2013/11/15
東京都美術館ギャラリーA[東京都]
地下の巨大なギャラリーを数本の赤い糸が斜めに横断し、床に置かれたモニターには赤い糸が画面中央を水平に横切るように映し出されている。壁には赤い線を引いた透明なビニールシートが貼られていて、全体でひとつの作品と見なせるインスタレーションだ。フライヤーを見ると出品作家は4人で、ほかにアートディレクター、コーディネーターの名が入っているが、この6人のコラボレーションということだろう。フライヤーには「“不可解”は決して悪ではない」「“不可解”は楽しく美しいものだし、それに、本当は幸福なことだ」などと書いてあるが、それと作品との関係が不可解だ。
2013/11/08(金)(村田真)
新具象彫刻展を出発点とした東京造形大学の出身者たち
会期:2013/11/04~2013/12/07
東京造形大学付属美術館[東京都]
ベタなタイトルだが、この「新具象彫刻展」というのは1976-85年の10年間、都美術館に集結した具象彫刻を目指す美大生たちのグループ展のこと。同展では、そのうち造形大出身者による作品を、「新具象彫刻展」出品作と、それ以降の作品、近作の3段階に分けて展示している。出品は中ハシ克シゲ、舟越桂、三木俊治、山崎豊三ら7人で、世代的には1945-55年生まれになる。みな出発点(つまり「新具象彫刻展」出品作品)は似たような具象だが、徐々に大きく姿を変えていくプロセスがうかがえて興味深い。とくに中ハシ克シゲの初期の鉄の具象からポップを経て、近年の戦闘機のフォト彫刻へと展開していく変貌ぶりは見ていて気分がいい。それに比べりゃ舟越桂などはあまり変化がないほうだ。こうして時間軸に沿って見ていくと、具象彫刻も捨てたもんではないなーと思う。ところで、屋外に1点、立方体のゲージに囲われたゴミの固まりが置かれていた。これは、原爆症で逝った殿敷侃が日本海に流れ着いた漂着ゴミを焼いて固めたものを、4半世紀後に三木俊治が発見し、福島原発の建屋を模したゲージに納めて作品に仕上げたものだそうだ。これは具象彫刻というより具体彫刻だ。
2013/11/04(月)(村田真)
浅井真理子「聞こえない声は、空に溶け拡散する」
会期:2013/11/01~2013/11/02
さくらワークス〈関内〉[神奈川県]
「関内外オープン!」に合わせた2日間だけの個展。作品は映像とライブドローイングで、映像は粘性の強い液体がドロドロと流れるもので、なにかと思えば手の平からこぼれ落ちるハチミツをアップで撮っているそうだ。ライブドローイングのほうは、ガラス窓越しに見える外の風景を直接ガラス窓になぞっていくというもの。風にざわめく木の葉まで写し取り、終われば消される徒労にも似た行為だ。映像とドローイングとのつながりはよくわからないけど、どちらもきわめて触覚的。
2013/11/01(金)(村田真)
横谷奈歩「鏡師、青、鳥」
会期:2013/09/28~2013/11/02
ハギワラプロジェクツ[東京都]
ギャラリーを紗のカーテンで分割し、さまざまな家具や道具と組み合わせたインスタレーションを発表。半透明の紗、鏡、映像、動物の剥製など虚実の境界を橋渡しする装置により、ここではないどこかもうひとつの世界を構築しようとしているようだ。こちらも鏡を多用しているため、いま見たばっかりの若江漢字の作品とつい比較してみたくなる。観念的な若江に比べて、横谷は触感的・身体的だ。
2013/11/01(金)(村田真)