artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
村山加奈恵「transmigration」
会期:2013/11/29~2013/12/24
LIXILギャラリー[東京都]
人の目のイメージを蝶のかたちに組み合わせて花に見立てた写真作品を規則正しく配列し、その合間に、花に囲まれたヌードの女性(作者本人らしい)を中心に据えた大きな写真作品を配している。すべて背景は黒で、とくに女性のいる大きな作品は古典絵画のような趣がある。いささかナルシスティックだが、作者の趣味・世界観がわりと明快なので今後も期待できそう。
2013/12/14(土)(村田真)
海藻──海の森のふしぎ
会期:2013/12/05~2014/02/22
LIXILギャラリー[東京都]
文字どおり海藻の展覧会。でも海中でゆらゆら揺れてる海藻をどうやって見せるんだろう、という興味だけで見た。展示はドローイング、写真、実物の標本と多岐にわたり、標本にはまた押し花みたい紙にぴったり貼りつけたもの、透明アクリル板に挟んだもの、アクリルのなかに浮かして固めたものなどがある。なるほど、時代を追って徐々に自然環境に近いかたちで見やすく再現していこうという努力が感じられる。もっとも自然環境に近いというのはあくまで見た目の話であって、透明アクリルに閉じ込めることほど反自然行為もないともいえるが。
2013/12/14(土)(村田真)
「ヨコハマトリエンナーレ2014」第3回記者会見
会期:2013/12/13
横浜美術館[神奈川県]
2014年8月から始まるヨコトリのアーティスティック・ディレクター、森村泰昌による進捗状況の中間発表。テーマ「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」の説明に続いて参加アーティストの発表だが、現在のところ釜ヶ崎芸術大学、マイケル・ランディ、メルヴィン・モティ、グレゴール・シュナイダー、高山明、和田昌宏、やなぎみわと、まだ7人しか決まっていない。おいおい開幕までもう8カ月もないというのに、この調子でいくと20~30組しか決まらないんじゃないか。国際展というより、横浜美術館のやや大きめの企画展といった位置づけになるんじゃないかと心配だ。でも量より質を狙うならそれもいいと思う。とくにマイケル・ランディの《アート・ビン》には期待したい。これは失敗作や不要になった作品を持ってきて捨ててもらう「ゴミ箱」を設置する計画で、「創造的失敗のモニュメント」だという。まさに横浜美術館にぴったりではないか?
2013/12/13(金)(村田真)
ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展
会期:2013/11/09~2013/12/23
名古屋市美術館[愛知県]
工藤哲巳の回顧展が開かれたり、篠原有司男夫妻の映画が封切られたり、最近60年代美術の再評価の気運が高まっているが、高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之によるハイレッド・センターの回顧展もそのひとつ。結成以前の「山手線事件」から、「第5次ミキサー計画」「シェルター計画」「首都圏清掃整理促進運動」を経て、赤瀬川の「千円札裁判」、その後の各人の作品まで集めている。ただしハプニングのように作品が残らないものも多く、写真や資料での展示が少なくない。その写真の大半は赤瀬川の著書によって知ってるため、おもしろおかしく自嘲気味に書かれたキャプションを思い出してしまい、まともに「芸術」として向き合えない。まあ「山手線事件」にしろ「首都圏清掃整理促進運動」にしろ、クソマジメに論じるほうが滑稽だけどね。
2013/12/12(木)(村田真)
CSP1「アンプリチュード──場への働きかけ」
会期:2013/11/29~2013/12/08
桑沢デザイン研究所1階[東京都]
東京造形大学卒業生6人による展示。タノタイガはさまざまな人物に扮して撮影した《15min.ポートレート》と題するセルフ写真を出品。15分といえばウォーホルの「だれでも15分間有名になれる」という言葉を思い出すが、それをひとりで独占しているわけだ。ミセス・ユキはヘビやクワガタの入った飼育箱を家具に組み込んだ作品。別にヘビやクワガタそのものをアートとして見せようとしてるのではないが、ほとんど動かないとはいえこういう場所に「動物」をもってくるとやはり反則気味のインパクトがある。末永史尚はパネルをタングラムのようにカットし、ストライプや迷彩模様を塗って組み替え可能にした絵画を展示。場所によって形態を変えるサイトスペシフィック絵画といえる。ほかにインスタレーションの大畑周平と狩野哲郎、木炭画アニメの辻直之らの出品。いまどきの売れ線の作家は避け、内省的・探求的な作品に絞ったところが好感がもてる。
2013/12/08(日)(村田真)