artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ボブ&ウィーダ

会期:2013/10/21~2013/10/29

YUGA Gallery & 立体工房[東京都]

芸大の日台交流展(「Do it yourself, Brain Massage」)を見に行ったらたまたまやってたので入ってみた。ひとりだけ目に止まった作家がいた。人のかたちに切り抜いた板に人の姿を描いた小さめの絵が2点あって、どちらも色とタッチとサイズが絶妙なのだ。作者はサブリナ・ホーラク。どこの人?

2013/10/25(金)(村田真)

4の扉──境界を超えて

会期:2013/10/22~2013/10/28

東京都美術館[東京都]

出品作家は新恵美佐子、土方朋子、義村京子、高野浩子の4人で、ひとりも知らない。ただ都美館の巨大な展示室をどれだけ有効に使ってるかという興味で見に行く。大きな作品を出しているのはふたり。新恵は天井の高い壁に巨大画面のタブローを2点も展示している。それぞれ510×540cmと424×510cmあるから、18畳と14畳分に相当する。もちろん1枚のタブローではなく、パネルを何枚もつないだものだが。高野は天井の低い展示室に木彫で本棚と本をつくり、古い家具とともにインスタレーションしている。ボルヘスの迷宮の図書館にはほど遠いが、展示室の中央を床から天井まで占拠するくらいの量塊感はあり、物理的な説得力がある。あとのふたりは比較的小さめなのでスルー。

2013/10/25(金)(村田真)

横山大観 展──良き師、良き友

会期:2013/10/05~2013/11/24

横浜美術館[神奈川県]

大観の作品を中心に、師の岡倉天心との関係を示す資料や、小川芋銭、冨田渓仙、今村紫紅、小杉未醒らの作品も展示。どこがいいんだかさっぱりわからない大観だが、こうして「良き友」に囲まれると大観のわからなさが少しわかってくる。たとえば、同展に並んだ小川芋銭の作品を「大観だ」といわれると納得してしまうが、逆に、芋銭の展覧会に大観の作品が混じっていれば明らかに違うとわかる。以下、渓仙も紫紅も未醒も同様。実際にキャプションを見ずに会場を一巡したとき、すべて大観の作品として違和感なく受け入れてしまったくらいだ。もちろん冷やかし半分でいいかげんに見ているからでもあるが、それ以上に大観の画家としての個性のなさが原因ではないか。これはもう、竹内栖鳳とは別の意味で「鵺」である。

2013/10/18(金)(村田真)

上海博物館──中国絵画の至宝

会期:2013/10/01~2013/11/24

東京国立博物館[東京都]

リニューアルオープンした東洋館の4階で開かれているのだが、なぜかエレベーターは4階に止まらない。仕方なく5階まで上って階段を下りるが、フロアは平坦でなく奥の4.5階みたいなところでやっていたのでわかりづらかった。東洋館てこんなに広かったっけ。中国絵画の展示は宋・元から明・清までの40件。それほど大きな展覧会ではないが、けっこうおもしろかった。五代(10世紀)の《閘口盤車図巻》は、水門の施設を描いた図。いわゆる遠近法ではなく、水平線と斜めの平行線で成り立っているのは洛中洛外図と同じだが、日本のように霞や金雲で細部をごまかしたりせず、空間的に辻褄が合うようにきちんと描いていて、まるでレオナルドの描いた精緻な設計図のようだ。山水画も日本より綿密に描き込んである。湖を俯瞰した南宋(13世紀)の《西湖図巻》は雪舟の《天橋立図》に先駆けてるし、同じく南宋の山水画《渓山図巻》は《モナ・リザ》の背景とよく似てる。トゲトゲしい樹木を描いた元(14世紀)の《枯木竹石図軸》などは、グリューネヴァルトを予感させずにはおかない。もちろんどれも中国のが早いといいたいのだ。圧巻は、明(17世紀)の《山陰道上図巻》。波打ち、のたくり、蠕動するシュールな山々が8メートルにわたって描かれているのだ。山水画は西洋の風景画に対応するといわれるが、じつはまったく異質なもので、なにか大地に宿る生命みたいなものを感知し視覚化する術だったのではないか。

2013/10/16(水)(村田真)

京都──洛中洛外図と障壁画の美

会期:2013/10/08~2013/12/01

東京国立博物館[東京都]

「京都でも見ることのできない京都」を謳い文句にした特別展。会場に入ると、いきなり4面の巨大スクリーンにこれから見る作品がドアップで映し出される。おいおい最初に見せるなよ。次の展示室には4件の「洛中洛外図屏風」が並ぶ。「上杉本」「歴博乙本」「舟木本」「勝興寺本」で、後期には東博の「舟木本」以外展示替えされる。これだけそろうと壮観で、いろいろ気づくことがある。まず、どれも金雲によって京の街が半分くらい隠れていること。前々から金雲や霞は空間を曖昧にすることで日本の絵画から構築性を奪う元凶だと思っていたが、とりわけ歴博乙本は半分以上が雲に隠れてしまって、さすがにやりすぎだろ。でも狩野永徳筆の上杉本は金雲がデザイン的にうまく処理されていて、やっぱり国宝だけのことはある。しかしいちばん華やかなのは岩佐又兵衛筆の舟木本で、祇園祭や遊女歌舞伎など色彩も鮮やかだし線描も艶やか。ところで、洛中洛外図には西洋的な遠近法が使われておらず、建造物は水平線と斜めの平行線で表わされるが、この斜めの線が作品によって右上に向いていたり左上に向いていたり一定してないのだ。カタログを見ると歴博甲本、舟木本、勝興寺本、池田本は左上、歴博乙本、上杉本、福岡市博本は右上とバラバラ。これはなにか意味があるんだろうか。もちろん画家が見た角度によって左右が決まるはずだが、これらは実際に見て描いたわけじゃないし、たんなる画家の気まぐれか。さて、京都御所の障壁画を通り抜けて次の展示室に入ると、またもや幅20メートル近い巨大な横長スクリーンに映像が映し出されている。龍安寺の石庭を定点観測的に撮影したもので、石庭そのものは変わらないが、塀の向こうの木々が四季折々変化していくのがわかる。春は中央に2種の桜が咲き、夏は緑におおわれ、秋は左右の紅葉樹が赤と黄色に色づき、冬は葉が落ちて雪が積もるという具合に、じつに巧みに色彩が配されているのだ。知らなかった。最後は二条城の障壁画。二の丸御殿黒書院一の間、二の間、大広間の四の間の襖や壁画をごっそり引っぺがして陳列ケース内に再現している。ムチャしよるなあ東京人は。

2013/10/16(水)(村田真)

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