artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

なべよこ ni アート

会期:2013/12/26~2013/12/28

鍋横大通商店会[東京都]

都内の空き物件を見つけて作品を展示してしまうヤドカリトーキョー、第12弾。中野区の鍋横商店街の約30軒の店先に20作家が作品を設置していた。が、朝近くで用事をすませて午前10時に着いたため、多くの店は開いておらず見ることができなかった。開いていたとしても飲食店はなにか注文しなければならず、敷居が高い。これはまあ仕方のないことで、全部見ようなんて思わないことだ。それでもみずほ銀行を縛った松本春崇の「家縛り」(の痕跡)や、呉服屋にぴったりの色柄の抽象画を飾った門田光雅など何点かは見ることができた。年末の商店街という過酷な環境のなかでいかに目立つか、アーティストは真剣に考えなければならない。

2013/12/27(金)(村田真)

篠原有司男・篠原乃り子二人展「愛の雄叫び東京篇」

会期:2013/12/13~2014/01/13

パルコミュージアム[東京都]

80歳を超えたニューヨーク在住の“前衛芸術家”篠原有司男ことギューちゃんと、20歳ほど年下の乃り子の結婚生活を描いたドキュメンタリー映画『キューティー&ボクサー』の公開記念展。ゲストキュレーターはニューヨーク在住の美術史家、富井玲子さん。乃り子の絵は初めて見るが、色彩はないけどマンガチックな線描はさすがギューちゃんのパートナーというか、パートナーになったからこういう絵になったのか。会場の1室はロールキャンヴァスに描いた全長20メートルはありそうな超大作に占められていて、これは彼女自身の悲喜こもごもの半生を表わした絵巻。ギューちゃんのほうは相変わらずギンギラギンに輝いている。「ボクシング・ペインティング」も2点ほど出ているが、パンチが当たった部分を花、絵具が滴り落ちる垂直線を茎と見立てれば、みごとな「燕子花図屏風」になる。欲をいえば、もっと大きな美術館で、もっとたくさん作品を見たかった。

映画『キューティー&ボクサー』予告

2013/12/24(火)(村田真)

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キューバ現代美術作家(アベル・バロッソ「タッチパネル電話展」+サンドラ・ラモス「現代の神話展」)

会期:2013/12/12~2013/12/24

プロモ・アルテ[東京都]

キューバ美術研究家の正木基氏が企画したアベル・バロッソとサンドラ・ラモスの2人展。おもしろかったのがアベル・バロッソの「タッチパネル電話」。スマホをはじめとする電子機器を木でつくったり、木製のロボットに入ってアシモと共演したりしているのだ。こういうアホがいるとうれしくなる。キューバもなかなか捨てたものでもない。

2013/12/24(火)(村田真)

ダイチュウショー

会期:2013/12/21~2013/12/28

府中市美術館市民ギャラリー+ループホール[東京都]

20世紀美術最大の冒険といってもいい「抽象」も、いまや絶滅危惧種に指定されそうなマイナスの勢いだ。いったい抽象はどこへ行ってしまったのか、みたいなグループ展。O JUNをはじめ荻野僚介、門田光雅、木村俊幸、佐藤万絵子、椎木静寧、末永史尚、五月女哲平、玉井健司ら20人が、美術館とギャラリーの2会場で発表している。しかしいわゆる抽象画ばかりとは限らず、具象イメージもあれば写真もインスタレーションもあり、もはや抽象も具象もないだろみたいな声が聞こえてくる。それにしてもいったい絵画はこれからどこへ向かっていくというのか。

2013/12/21(土)(村田真)

O JUN「描く児」

会期:2013/12/21~2014/03/02

府中市美術館[東京都]

出品作品は約150点。具象と抽象、線と面、水と油、モノクロとカラー、ペインタリネスとフラットネスなど、異質な要素をひとつの作品に同居させたユニークな絵が並ぶ。紙作品に鉄枠をはめたり,大胆にもほどがある。ところで、同展はO JUNの「30年にわたる歩みを総覧」するといいながら、実際はここ15年間の作品が大半を占めている。おそらく独自のスタイルを確立した90年代末以降に絞ったんだろう。ぼくはそれ以前の作品も見てるはずだが、記憶にない。だとすればなおのこと初期の作品も見たいと思った。

2013/12/21(土)(村田真)

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