artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

子育てと美術

会期:2013/09/09~2013/09/14

藍画廊[東京都]

「美術と子育て」ではなく、「子育て」を先に持って来たところに企画者の思いがにじみ出ている。片隅に1畳ほどの臨時託児所(?)も設けられてるし。出品作家は7人(+子ども)。青木聖吾は人の顔のシルエットをぼんやりと描いている。子どもが最初に見る親(大人)の顔か。河田政樹は子どもが汚したシーツと自分の絵を併置している。なるほど、大差ない。子どもとのコラボレーション作品もあって、こうなると美術も遊びも子育ても境界線がなくなってくる。稲垣立男はイギリス滞在時に親子でグラフィティ・ワークショップ(さすがバンクシーの国!)に参加したときの作品を展示。子どもは「ARMY MAN」、オヤジは「VIAGRA」と書いている。稲垣が子どものころ父親がつくってくれたというバットも再現しているが、これがまるで男根。子育てと性の関係も追求すべきテーマかもしれない。

2013/09/14(土)(村田真)

「クローゼットとマットレス」スミルハン・ラディック+マルセラ・コレア展

会期:2013/09/04~2013/11/30

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

チリの建築家とアーティストのユニット。大きいほうの展示室には、マットレスを丸めてヒモで吊るした異形のオブジェがいくつも並び、もうひとつの展示室には高床式の小屋のようなクローゼットが置かれ、暗い内部に入れるようになっている。個人にとってきわめて親密な家具であるマットレスとクローゼットを通じて、記憶の領域に迫ろうという意図らしいが、日本人にはあまりなじみのない家具だけにピンと来なかった。これが押入れとフトンだとぜんぜんイメージが違ってくるし。

2013/09/14(土)(村田真)

ミン・ウォン展 私のなかの私

会期:2013/07/06~2013/09/22

資生堂ギャラリー[東京都]

作者はベルリンを拠点に活動するシンガポール人のアーティスト。その作品は、日本の「時代劇」「現代劇」「アニメ」からエッセンスを抽出してストーリーを仕立て、すべてのキャラクターを本人が演じてみせる新作映像だ。日本で滞在制作した力作だが、森村泰昌以降このような他者に扮するセルフポートレートのバリエーションが増えて、もはや食傷気味。と思ったら、資生堂ギャラリーの次回展はまたもや森村泰昌展だ。邪推すれば、資生堂がこのテの「扮装」作品を好きなのは化粧品会社だからじゃね? 企業メセナの理由づけが明快、ともいえる。

2013/09/14(土)(村田真)

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入江早耶 個展「見出されたかたち」

会期:2013/09/07~2013/09/28

東京画廊[東京都]

消しゴムのカスを使って造形する作家。今回はドガの踊り子、ピカソの裸婦像、岸田劉生の麗子像など名画の絵葉書を消しゴムでこすって消し、出たカスでこすりとった人物像を小さなフィギュアのように再現している。つまり平面の人物像が立体に転換されているわけだ。よく見るとモデルのポーズや持ち物が原画と違うが、これは立体化されることで戸惑うモデルの心情を表わしたものだそうだ。芸が細かいし、よくできている。それだけに見事な「職人技」としか見られない恐れもある。

2013/09/14(土)(村田真)

第98回二科展

会期:2013/09/04~2013/09/16

国立新美術館[東京都]

文展から二科が独立して早98年。絵画だけで千人以上の作品が並ぶ。2点出してる人もいるので、点数でいうと1,200点はあったか。それを約1時間で制覇。1点に3秒もかけてしまった。さすが「二科」だけあって日展より新しもの好きが多いせいか、彫刻も含めて抽象が多い。でも完全抽象は数点しかなく、たいてい具象形態の名残があったり奥行きや立体感があったり、ハンパ感は否めない。このハンパ加減はサービス精神の表われなのかも。何点か目に止まった作品もあった。高藤博行は縦長の画面の枠を強調するように窓枠を描き、その内側に庭の植栽と自分の姿も含めてガラスに映った室内風景をダブらせて描いている。絵画意識の高い絵画である。奥田明宏の作品は、ルーベンスの《レウキッポスの娘たちの略奪》をピカソ風に再解釈したもの。名画の引用はたまに見かけるが、これはしっかり再構築している。田辺美穂子は、塗り重ねた画面の上に黒い線描でクマのぬいぐるみや卓上の小物をザックリ描いていて、もっとも「現代」的。珍しく額縁もつけず、今回見たなかではいちばんモダンな絵画といえる。さて、二科展も再来年に創設1世紀を迎えるため、今回は同会と関係の深かった岡本太郎のコーナーを設けていた。のだが、展示は油絵の複製や「太陽の塔」の写真パネルのみ。ショボイぞ。

2013/09/14(土)(村田真)