artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
印象派を超えて──点描の画家たち
会期:2013/10/04~2013/12/23
国立新美術館[東京都]
タイトルが「印象派を超えて」と「点描の画家たち」の2段がまえのうえ、「クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に」「ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」という長ったらしいサブタイトルもつく。それだけ見どころが多いともいえるが、焦点が絞りきれていないとも考えられる。展示は、モネやシスレーらの感覚的な点描に始まり、スーラ、シニャックらが確立した科学的点描(分割主義と呼ぶ)、その影響を受けたゴッホやゴーギャン、さらにベルギーとオランダの分割主義を経て、モンドリアンの抽象にいたる流れをたどるもの。これを見れば、20世紀美術を決定づけた抽象の源流のひとつが点描にあると受け止めることもできるだろう。その意味ではよく練られた展覧会といえるが、しかし見せたいのは個々の画家や作品ではなくモダンアートの流れそのものなので、見せ場がモネ、スーラ、ゴッホ、モンドリアンなどいくつかに分かれてしまった。タイトルがひとつに絞りきれないのもうなずける。
2013/10/03(木)(村田真)
レオナール・フジタ展──ポーラ美術館コレクションを中心に
会期:2013/08/10~2013/10/14
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
「ポーラ美術館コレクションを中心に」とあるように、出品作品の大半がポーラ美術館から来ている。とくに小さなボードに描かれた100点近い「小さな職人たち」シリーズを含め、戦後の作品はほとんどポーラのもの。戦前の作品でも、初期のものやフジタと同時代の画家の作品はポーラのコレクションだ。結局もっとも人気の高い20年代の作品だけはほかの美術館から借りている。ポーラがフジタを集め出したころにはすでに各地の美術館に収まっていたんだろう。戦争画は1点もないが、戦前と戦後で、というより戦争画以前と以後とで連続性と非連続性が見られるのが興味深い。連続性は、あいだに戦争画を描いたとは思えない繊細な線描と淡い色彩を主調とする甘美な画面だが、非連続性は、にもかかわらず戦前のフラットな装飾的画面に対し、戦後は立体感とリアリティが増してきたこと。これは明らかに戦争画の描写の名残だろう。それゆえに、甘美な20年代に戻りたいけど戻れないもどかしさみたいなものが、戦後のフジタを特徴づけているように感じる。
2013/09/29(日)(村田真)
死刑囚の絵画展──囚われているのは彼らだけではない
会期:2013/09/28~2013/09/29
鞆の津ミュージアムでやっていた死刑囚の絵画展が渋谷にも来るというので見に行く。殺風景な展示空間に作品数を絞って展示してあるため、焦点がより明確化したように感じる。あらためて気づくのは、みんな几帳面に描いていることだ。多くの人は絵を描きたい(表現したい)というよりも、ていねいに写す作業に没頭したいという印象を受ける。だから内容はほとんどなんでもいいという感じ。ただ何人かは明確になにかを訴えている。「死刑廃止」をはっきり訴えているのは33人中3人いるが、偶然なのか、うち2人はすでに死刑が執行されたという。皮肉なもんだ。ところで、彼らの作品がこうして外部に公開される際、当局による検閲はあるのだろうか。
2013/09/29(日)(村田真)
日産アートアワード2013
会期:2013/09/18~2013/11/04
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
日産自動車創立80周年を機に、今年から隔年で開かれるアワード展。5月末にヴェネツィアで開かれた第1次選考で8人のアーティストが候補に上がり、約3カ月かけて制作した作品がBankARTに展示されている。それをもとに5人の審査員がグランプリを決めるというシステムだ。審査員は南條史生、逢坂恵理子、ファン・ドゥ、ジャン・ド・ロワシー、ローレンス・リンダーで、アーティストは安部典子、小泉明郎、増山裕之、宮永愛子、西野達、篠田太郎、鈴木ヒラク、渡辺英司。グランプリに輝いたのは宮永愛子で、賞金500万円と名和晃平デザインのトロフィーが贈られた。めでたしめでたし。ではなくて、なんで海外から3人も審査員を招いているのに候補アーティストは日本人だけなのか、なんで「年齢を問わず」と書いてあるのに40代前後のアーティストばかりなのか、なんで名和は候補に選ばれずトロフィーをデザインする側に回ったのか、そもそも8人の候補者はどういう規準で選ばれたのか、絵画は最初から対象外だったのか、ナゾは深まるばかり。それより問題なのは、鳴り物入りのわりに全体的に作品がパッとしないことですね。
2013/09/25(水)(村田真)
ドリフターズ・サマースクール2013成果発表『ココ』
会期:2013/09/21~2013/09/22
さくらWORKS〈関内〉[神奈川県]
縁あって今日は立て続けに演劇を2本見る。うち1本は「演劇」というより観客参加のパフォーマンスアート。もう1本(悪魔のしるし公演『悪魔としるし』)も昔よく見た「演劇」に比べればはるかにアートっぽいけどね。ドリフターズ・サマースクールは、リーフレットによれば「ダンス・ファッション・建築・デザインといった異なるジャンルでプロフェッショナルを目指す若者が集い、相互に刺激を与えながら作品を生み出していく〈新しい創作の場〉として、2010年に横浜でスタート」した集団。まずは受付でクジを引き、それぞれ引き当てた指示書どおりにビル内を動き回る。ぼくはカゴを手に、廊下や階段に置かれた植木鉢のなかの野菜を集める役。その後ビルの屋上に全員集合し、机を並べて授業が始まる……というような展開。おもしろかったのは、屋上に上って初めてこのビルが「コ」の字のかたちをしているのに気づいたこと。だけでなく、隣のビルの屋上でもパフォーマンスが繰り広げられるのだが、隣のビルも「コ」の字型をしているのだ。最後になってようやく「ココ」というタイトルの意味がわかる仕掛け。
2013/09/21(土)(村田真)