artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

國安孝昌展《静かに行くこと、遠く内省すること》

会期:2013/08/26~2013/09/14

ギャラリーなつか[東京都]

最初にギャラリーなつかで國安の作品を見たのは88年だったか、小さな陶ブロックを何千個も積み上げた物量感に圧倒されたものだ。そのころから丸太は使われていたが、國安といえばかつて「陶芸作家」に分類されたこともあるくらいで、丸太はあくまで補助的なものだった。やがて丸太の量が増すにつれ形態は螺旋状、カプセル型、鳥の巣状と多様化し、ダイナミズムを生むようになる。むしろバリエーションを増やすために丸太を多用したのかもしれない。陶ブロックだと積み上げる以外にバリエーションはないから、徐々に陶の存在感は減り、すっかり逆転してしまった。今回のインスタレーションも空間が歪むほどの圧倒的存在感だが、陶ブロックは丸太を組んだ隙間に差し挟まれるだけのチョイ役に甘んじている。丸太を使うアーティストは多いけど、陶でインスタレーションする人はあまりいないからちょっと残念に思っている。

2013/08/29(木)(村田真)

横尾忠則 日本の作家222

会期:2013/08/19~2013/09/14

南天子画廊[東京都]

222人の日本の文学者のポートレートを収めた画集『日本の作家222』の出版に合わせた展覧会。森鴎外や夏目漱石など明治の文豪から、安部公房、澁澤龍彦、中上健次まで、4号(33×24cm)のキャンバスに描かれた222点が一堂に展示されている。モノクロあり蛍光色あり、リアリズムあり線描画あり、ウォーホル風ありホックニー風ありとスタイルは千差万別だが、当然ながらみんな横尾っぽい。横尾っぽいとはよくも悪くも素人っぽさを残してるということ。喜寿を迎えるというのに、画家宣言30年を超えるというのに、いまだ素人っぽいというのはスゴイことだ。

2013/08/29(木)(村田真)

富田菜摘展「おとなの大運動会」

会期:2013/08/26~2013/09/14

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

サラリーマンとか政治家とかコギャルとかにグルーピングされたレリーフの群像が、騎馬戦や二人三脚のかっこうで壁3面に掛けられている。表面は新聞(たまに雑誌)の広告写真を切り貼りしたもので、顔の部分は広告に登場する人の顔の寄せ集めで成り立ち、あっちこっち文字も読みとれるという仕掛け。サラリーマンの集団なら先頭の社長の顔にファーストリテイリングの柳井社長ら、女性主任に江角マキコらの顔写真がコラージュされ、ところどころ「ビジネス」「経営」といった言葉が踊っているといった具合だ。以前はこれを立体でやっていたが、立体だと「フォトモ」をはじめ類似作品があるし、レリーフのほうが表現の幅が広がりそう。でもこういうわかりやすい作品はすぐに消費されかねないので、「おもしろい」で終わらないようなヒネリや毒が必要かも。

2013/08/29(木)(村田真)

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Unknown History

会期:2013/08/23~2013/09/04

アユミギャラリー+アンダーグラウンド+早稲田スコットホールギャラリー[東京都]

2011年8月、カトウチカの呼びかけにより始まったグループ展。今回で3回目、と思ったらなぜか4回目。毎回テーマを変え、民家を改装したギャラリーを中心に、地下2階のなんの変哲もない部屋、一駅隔てたレンガ壁のクセのあるホールと、あえて一筋縄ではいかない空間で作品を発表している。今回の全体テーマは「歴史」だが、優れた作品はテーマを超えるようだ。「ヤドカリトーキョー」もやってる門田光雅は、どんな場所であろうとおかまいなくコテコテのタブローを出している。よくも悪くもブレがない。荻野僚介もいつものような抽象画を出してるが、奇跡的にレンガ壁と合っている。高橋大輔は初耳だが、門田以上に分厚く絵具を載せたタブローで、ほとんどレリーフ状態。ここまでくるともはや場所を選ばない。絵画以外では、アンダーグラウンドのさらに奥の機械室みたいなとこで、マルチスクリーンに流動物の映像を流す町野三佐紀と、鉄カブトを並べて音を出す西原尚のインスタレーションが、場所ともども印象に残った。

2013/08/26(月)(村田真)

井口雄介+松本玲子+椋本真理子 三人展

会期:2013/08/05~2013/08/25

ライズギャラリー[東京都]

1年にわたり2、3人の若手アーティストに絞って個展やグループ展を開いていく「クリエティビィティ・コンティニューズ2013-2014」の第1弾。今回は3人のグループ展で、井口雄介はシナベニヤ製のパラボラアンテナに、細かい計算式を書いた設計図とその青焼きを出品し、松本玲子は紙に水彩画、椋本真理子は水を「かたまり」として実感させる作品を展示している。いわば顔見世興行みたいなもんで、これから1年間どのように展開していくか楽しみだ。余談だが、学芸大学駅からギャラリーに向かう途中、世田谷通り沿いのダイエーの前に人垣ができていた。なんだろうと思って見てると向こうからオレンジ色の集団がやってくる。マラソンにしては遅いし、競歩にしても遅い。デモかとも思ったがなにも聞こえてこない。お、集団のなかに太った女の人が! そう、24時間マラソンでした。

2013/08/25(日)(村田真)