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村田真のレビュー/プレビュー

生誕250周年 谷文晁

会期:2013/07/03~2013/08/25

サントリー美術館[東京都]

近代以前の日本絵画はパターン化しているからつまらないと思っていたが、この展覧会を見ると、日本絵画のパターンはひとつではなくいくつかあって、谷文晁はそのいくつものパターンを描き分け、折衷してるからおもしろいことがわかった。これは当時、掟破りだっただろう。なにしろ狩野派から土佐派、円山四条派、中国画、洋風画までレパートリーは広く、自由に行き来していたという。いまだと油絵と日本画とスーパーリアリズムとヘタウマをひとりで同時にやっちゃうみたいな。近代以前のポストモダニストですね。

2013/08/21(水)(村田真)

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平川恒太「Trinitite──けいしょうされぬ記憶と形」

会期:2013/08/01~2013/08/15

バンビナートギャラリー[東京都]

宮本三郎の作戦記録画や核実験のキノコ雲の写真を黒く塗り替えたような絵画と、戦中に制作されたアニメのキャラクターを拡大した作品の展示。タイトルの「トリニタイト」とは核爆発によって生成される人工鉱物の名称だが、黒い画面に付着したラメがキラキラ光るせいか、まさにイメージが結晶化したような印象だ。以前、長崎出身の彫刻家・森淳一もキリスト教の「トリニティ(三位一体)」にかけて同名の聖母子像をつくっていたが、こうして新世代に戦争や核問題を継承・形象・警鐘していってほしい。

2013/08/14(水)(村田真)

野中ユリ「美しい本とともに」

会期:2013/06/08~2013/09/01

神奈川県立近代美術館鎌倉別館[神奈川県]

作者から作品が寄贈された記念に約120点を展示。野中ユリといえば、70年代の『現代詩手帖』や『ユリイカ』の挿絵としてよくコラージュや版画が使われていたなあ。瀧口修造や澁澤龍彦らと同じ記憶庫に眠っている。ぼくの脳内の話ですよ。作品は印刷を前提としたコラージュが多く、小品が大半なので美術館で鑑賞するもんではないな。でも掲載誌もいくつか出品されてるし、くつろいだ雰囲気の別館だから許しちゃる。

2013/08/11(日)(村田真)

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生誕100年 松田正平展

会期:2013/06/08~2013/09/01

神奈川県立近代美術館鎌倉[神奈川県]

葉山に行ったついでに鎌倉にも寄ってみる。松田正平という画家は初耳だが、鎌倉で回顧展を開くほどだからきっといい絵に違いない。山田洋次や片岡鶴太郎らファンも多いらしく、洲之内徹など「比類のない美しい絵肌」と絶賛したらしい。チラシにも「飄々とした」とか「味わい深い」とか「洒脱な中にも厳しさを兼ね備えた詩情豊かな」とか、それこそ「詩情豊かな」言葉が並ぶ。しかしざっと駆け足で見たが、なにがいいんだか、どこが味わい深いんだか、なんで詩情豊かなんだかさっぱりわからなかった。こういうのは一生「わからない」だろうなあ。

2013/08/11(日)(村田真)

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戦争/美術 1940-1950 モダニズムの連鎖と変容

会期:2013/07/06~2013/10/14

神奈川県立近代美術館葉山[神奈川県]

神奈近葉山の開館10周年記念展。10周年なのに、なぜはるか昔の第2次大戦を挟む40年代展を企画したのかというと、神奈近が鎌倉に開館するのが1951年なので、それ以前の10年間を振り返ってみようということらしい(出品作品の制作年は1935~60年)。まあ理由づけなんかどうでもいい。興味があるのは、戦争画とそれ以外、とくに敗戦後の絵画との対比だ。ところが予想に反して戦争画は少なく、東京近美所蔵の「作戦記録画」は藤田嗣治の《ソロモン海域に於ける米兵の末路》と《ブキテマの夜戦》、山口蓬春の《香港島最後の総攻撃図》のわずか3点のみ。さすがに戦中は戦争画ではなくても戦争に関連する絵が多いが、日常的な主題の絵も少なくない。ざっくりいうと、日本の美術史は40年代に戦争画が割り込むによって戦前と戦後に分断され、しかも戦争画を抜いたら戦前・戦後は「前衛」によって接続可能だと思っていたが、そんな図式的にきっちり変化したわけじゃなく、グラデーションのように徐々に変化していったことがわかる。サブタイトルの「連鎖と変容」はそういうことだった。

2013/08/11(日)(村田真)

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