artscapeレビュー

第98回二科展

2013年10月15日号

会期:2013/09/04~2013/09/16

国立新美術館[東京都]

文展から二科が独立して早98年。絵画だけで千人以上の作品が並ぶ。2点出してる人もいるので、点数でいうと1,200点はあったか。それを約1時間で制覇。1点に3秒もかけてしまった。さすが「二科」だけあって日展より新しもの好きが多いせいか、彫刻も含めて抽象が多い。でも完全抽象は数点しかなく、たいてい具象形態の名残があったり奥行きや立体感があったり、ハンパ感は否めない。このハンパ加減はサービス精神の表われなのかも。何点か目に止まった作品もあった。高藤博行は縦長の画面の枠を強調するように窓枠を描き、その内側に庭の植栽と自分の姿も含めてガラスに映った室内風景をダブらせて描いている。絵画意識の高い絵画である。奥田明宏の作品は、ルーベンスの《レウキッポスの娘たちの略奪》をピカソ風に再解釈したもの。名画の引用はたまに見かけるが、これはしっかり再構築している。田辺美穂子は、塗り重ねた画面の上に黒い線描でクマのぬいぐるみや卓上の小物をザックリ描いていて、もっとも「現代」的。珍しく額縁もつけず、今回見たなかではいちばんモダンな絵画といえる。さて、二科展も再来年に創設1世紀を迎えるため、今回は同会と関係の深かった岡本太郎のコーナーを設けていた。のだが、展示は油絵の複製や「太陽の塔」の写真パネルのみ。ショボイぞ。

2013/09/14(土)(村田真)

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