artscapeレビュー

國安孝昌展《静かに行くこと、遠く内省すること》

2013年09月15日号

会期:2013/08/26~2013/09/14

ギャラリーなつか[東京都]

最初にギャラリーなつかで國安の作品を見たのは88年だったか、小さな陶ブロックを何千個も積み上げた物量感に圧倒されたものだ。そのころから丸太は使われていたが、國安といえばかつて「陶芸作家」に分類されたこともあるくらいで、丸太はあくまで補助的なものだった。やがて丸太の量が増すにつれ形態は螺旋状、カプセル型、鳥の巣状と多様化し、ダイナミズムを生むようになる。むしろバリエーションを増やすために丸太を多用したのかもしれない。陶ブロックだと積み上げる以外にバリエーションはないから、徐々に陶の存在感は減り、すっかり逆転してしまった。今回のインスタレーションも空間が歪むほどの圧倒的存在感だが、陶ブロックは丸太を組んだ隙間に差し挟まれるだけのチョイ役に甘んじている。丸太を使うアーティストは多いけど、陶でインスタレーションする人はあまりいないからちょっと残念に思っている。

2013/08/29(木)(村田真)

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